コカリゴケに囲まれた洞窟を奥へと進んだ俺たち4人は、王城裏口付近へと続く梯子の前までたどり着いていた。

アコード

…ここから、王城の近くに出れるんだな

ガイーラ

そうだ。引き続き、俺が先に梯子を登るから、後に続いてくれ

アコード

了解

アルモ

分かったわ

レイス

主の思うがままに

 金属製の梯子は、俺たちの登る歩調に合わせ、金属音を奏でている。

アルモ

…この音で、敵に気づかれないかしら…

ガイーラ

この通路の存在は、一部の兵隊しか知らない。それでいて、王城側の出入口は、普段人気(ひとけ)の全くない場所だ。恐らくは、大丈夫だろう。

 梯子を上がりだしてから2、3分程が経過しただろうか。

 先頭を行くガイーラが昇るのをやめる。どうやら、出入口まで登り詰めたようだ。

ガイーラ

ちょっと待ってくれ………ウッ…ウォリャ!

 足をうまく梯子にかけ、先頭のガイーラが石の蓋を掛け声と共に横にずらしていく。

ガイーラ

みんな、砂や埃が落ちてくるから、下を向いて目を閉じるんだ!

 ガイーラの忠告に、3人が忠実に従う。

 石の蓋が横にずれると同時に、ガイーラの忠告通り、砂や埃が上から振ってくる。

 数分後…

ガイーラ

…みんな、もういいぞ

 ゆっくりと目を開け見上げてみると、石の蓋が半分程開いた状態だった。

 そこから月明りがまぶしい程に照らされ、その光に負けたヒカリゴケの発光が無くなっているのが分かる。

ガイーラ

…外には誰もいないようだ。外に出よう

 周囲を確認したガイーラが外に出ると、それに続いて俺を含む3人が順番に外に出る。

レイス

主。この後は?

ガイーラ

…この近くに勝手口がある。そこから場内に侵入しよう

ガイーラ

ここからは、ワイギヤ軍との戦闘を避けることは、恐らくできないだろう

アルモ

気を引き締めていかなきゃね!

アコード

そうだな!!

ガイーラ

勝手口はこっちだ。行くぞ!

 再びガイーラを先頭に、俺たちは勝手口へと向かう。

 途中、城壁を見回っているワイギヤ軍兵士を目視で確認した俺たちは、それをうまくやり過ごし何とか勝手口までたどり着いた。

ガイーラ

よし!何とかここまでは誰にも気づかれずに来たな

アルモ

ここからはどうするの?

ガイーラ

ここも、俺が先に行って中を確認して来よう。それが、一番スムーズに陛下のところまで行けるはずだ。
皆は、ここで待機していてくれ

 そう言うや否や、勝手口から城内へ侵入するガイーラ。

レイス

それでは、私はこの周囲の警戒に当たろう。
主が戻ってきたら、猫の鳴きまねをして呼んでくれ。

 そう言うや否や、一瞬で姿を消して偵察を始めるレイス。

アルモ

…何だか、ごめんなさい。アコード…
私の…私たちの戦いに巻き込んでしまって…

アコード

何で、君が謝る必要があるんだ!?

アルモ

だって、あなたはフォーレスタ村の跡取りで、あそこにいれば村長の座が約束されていた訳で…

アコード

例えそうだとしても、母さんは何もしないで俺を村長にはしなかっただろうな…
『フォーレスタ家は、村民と共にあれ』が家訓だから…

アルモ

村の長っていうのも、案外大変なのね…

アコード

まぁ、でも俺は気の置けない友だちが2人、いや、今は3人も居てくれる。
それだけで、俺は幸せなんだと思うよ!

アコード

アルモ。君のお陰で、俺は変わることができそうなんだ。
それに、大切な友だちも…

アルモ

3人!?
シューさんとサリットさんと、後は?…

アコード

…アルモ!君だよ…

アルモ

えっ!?

 別に恋の告白をした訳でもないのに、顔を真っ赤にする俺。

 そして、心なしかアルモの顔も、薄紅色に染まっているように見えた。

アコード

まぁ兎に角、今はフォーレスト国王陛下の安否を確認して、もしご無事だったら、フォーレスタ村までご案内しよう。
母さんが今ここにいたら、きっとそうしろと言うに決まってるし。

アルモ

そうね。アコードがそう言ってくれるなら、フォーレスタ村にご案内しましょう

アコード

どうやら、ガイーラが戻ってきたようだ

 アルモが可愛い猫の鳴きまねをする。

アルモ

…どうしたの、アコード…

アコード

いや、アルモの猫まね声、可愛いなぁと思って…

アルモ

!!

 思わず本音が口を突いて出てしまい、赤面する俺。

アルモ

…普段は、こんなことしないんだから、ね…

 恥ずかしそうにそっぽを向くアルモ。

レイス

???どうしたんだ、2人とも…

 そんな俺たちを見て疑問に思う戻ってきたレイス。

アコード

いや、レイス。何でもないんだ

レイス

???

ガイーラ

…大変だ!謁見の間の方向から、剣のぶつかり合う音が聞こえてくるんだ!

 戻ってくるや否や、急報を伝えるガイーラ。

アコード

それじゃ、陛下は今…

ガイーラ

恐らくお一人か、もう一人の近衛隊長と連携して戦闘をしているのだと思う

アルモ

いずれにしても、早く謁見の間へ向かった方が良くない?

レイス

アルモの言う通りだ。主、早く謁見の間へ…

アコード

俺も、そうした方が良いと思う

ガイーラ

…よし、決まりだな。謁見の間へと急ごう

 俺はアルモからもらったショートソードを鞘から抜くと、臨戦態勢のままガイーラの後に続き、勝手口から城内へと侵入した。

第6話 に続く

Episode4「王都陥落」第5話~侵入~

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