ネプト

ぶっ……!
あっははははは!!!ばーっかでー!!!!wwwwww

ルナ

いやいや笑い事じゃないでしょ!?
その女の人も災難だったわね…知らない人に裸見られるなんて…

俺たちは、たくさんの人で賑わう商店街にいた。ついさっき買った芋の串揚げを食べながら、さっき違う人の部屋に入ってしまったことを話していたらこれだ…。

アルマ

間違いなんて誰にでもあるよ…それにほら、疲れてたんだし…

シルフ

でも、よりによって着替え途中の女の人の部屋に入るとはな!傑作だわwwww

アルト

ほんとうにびっくりしたんだって…声もネプトにそっくりだしさ…!

ルナ

ネプトって、確かに男の人にしては高い声してるわよね…

ルナ

じつは女の子でしたーって言われても、あたし驚かないと思うわ

ネプト

あー、それはウィルとかにも言われるな。
家事全般できるし、料理もできるし、女だったら嫁に欲しいってさ

ネプト

まあ俺男だし?ざーんねん☆

シルフ

ノロケか

ルナ

ノロケね

アルマ

ノロケだね

ネプト

ちげえよ!!

その後も和気藹々としながら祭りを堪能し、俺たちは広場に戻ってきた…と、何やら人だかりができている。何かやってるのかな?

アルト

ん…?何かやってるのかな?

ネプト

あー、多分階級試験の要項が発表されたんだろう…見てみるか?

ルナ

見ましょ見ましょ!!アルトだって受けるんだから、なんの試験受けるのか決めとかなきゃ♪

アルト

試験って種類ごとにわかれてるもんなのか?

ネプト

ああ、アルトには軽剣士の試験に挑んでもらおうと思ってる。獲物はナイフやダガーだな。あとは体術も出来るといいんだが…

アルマ

アルトは…ちょっとキツイかもね…今日の感じ見てると…

アルト

うーん…ごめん…

人だかりがある程度収まるのを待って、俺たちは要項を見に行った…が、俺には全く読めなかったので、ネプトに読み上げてもらう形になったけど…。

ネプト

軽剣士の項目は…っと、あったあった……
『武器は各自用意することとする。試験内容は、魔導製物との簡単な実践試験のみとする』……だってよ

ネプト

良かったな、簡単な試験だけだ

アルマ

まあ、軽剣士の試験だからね…そう言えば、エルクはどの試験を受けるの?

ネプト

ああ…アイツはトリックスターだ。

シルフ

トリックスター!?…王族ってホント大変なんだな…

ネプト

んー…ホントは双剣士とかナイトとかでも良かったんだが…挑発しすぎたというか…なんというか…

アルト

挑発って…一体彼に何をしたのさ?

ネプト

んー?俺より強くなれーって言った。ただそんだけ。

ルナ

ああ、それでトリックスター……ネプト、前から思ってたんだけど、あんたって変なところで無茶ぶりするわよね…

ネプト

トリックスターにならなくたって、俺より強くなる方法はいくらでもあんのにな…

シルフ

…………

ネプト

ま、目指したいなら目指せばいいと思うし!俺は止めねえよ

アルマ

でも…今回のトリックスターの試験内容…

シルフ

これ……ふざけてるとしか思えねえんだけど…

ルナ

あー…やっぱ、そうよね。私の基準が甘いわけじゃないわよね?

アルト

ん…?そんなにヤバイのか?

俺が聞くと、4人はそれぞれ言いずらそうに目をそらした…え、何その反応…すごい気になる…!

ネプト

……『リプシュケーにトドメをさせ』…だ。

アルト

リプシュケー…?なんだそれ…

シルフ

リプシュケーは、モンスターの一種だ。それも、タダのモンスターじゃない…リプシュケーは『記憶獣』っていう、神獣に並ぶくらい強いモンスター…記憶獣種の中でも弱めで温厚なほうだけど、それでも十分な強さを誇るモンスターなんだ。

アルマ

リプシュケーを利用した試験は他でも見たことあるけど…その大半はマジナイトの試験だった。けが人はもちろん毎回出てるし…下手したら死人も…

アルト

死人!?だ、大丈夫なのか…エルク…?

ネプト

それだけ、魔戦士の試験は厳しいってことだ…試験会場には上級職の職員が常駐してるから、早々馬鹿な戦い方しなきゃ死人は出ないようになってる。

ネプト

だから多分…大丈夫だ……多分……

ネプトが言うと、それ以来みんな黙ってしまった…エルク、本当に大丈夫なのか…?

それから2日間、俺とエルクはネプトとアルマに稽古をつけてもらった。エルクはその間に目を見張るほど成長し、明日に控えた階級試験も安心だとネプトからお墨付きを貰えるほどになった…でも、俺は……。

アルト

………

アルト

試験…明日か…俺、大丈夫なのかな…今日まで何回か実戦もしてもらったけど、1度も2人に届かなかった……

アルト

………はぁ……

アルト?

アルト

ふえ!?

ふと声が聞こえた方に目を向けると、隣の部屋のベランダに、シルフが立っていた。薄く湯気がたっているところを見るに、風呂上がりだろうか…

シルフ

なーにセンチメンタルになってんだ?
明日の試験、そんなに心配?

アルト

……うん。
だって、俺…ナイフの構え方とか、全然ダメだし…2人に傷一つ付けられなかったし……

シルフ

ま、そうだろうね。ネプトは知らないけど、アルマは強いし…アルトじゃどうにも出来ないよ。

アルト

はは…そうだよな…俺なんかじゃとても…

シルフ

……俺も、アルマには結局一度も勝てなかったよ

アルト

えっ…!?嘘!?だって、アルマは普通に戦ったらシルフには叶わないって……

シルフ

そんなの謙遜だよ。俺と戦う時は、アルマはいつも手ぇ抜いてたし…本気のアルマには、一度も勝てたことなんてない

アルト

そう、なんだ……

ふわりと優しい風が吹き、俺たちの髪を揺らしていった。眼下では祭り後の静かな空気が流れている…。

シルフ

俺、さ…最初は、誰かの騎士になるなんて、思ってもなかったんだ。

アルト

へ?自分で志願したんじゃなかったのか?

シルフ

いや…俺元は、その…あんまし言えないような仕事しててさ…アルマが、それじゃいけないって、俺をそこから救い出してくれたんだ…俺を騎士にするって名目で…

シルフ

でも俺、剣技とかてんでダメでさ…独学で練習しまくって、魔法で何とかなったって…そんな感じで…でも足も出なかったんだ。騎士なんて夢のまた夢って感じで…

アルト

…………

シルフ

でもさ、試験で何とかなっちゃったんだ。やらなきゃって思ったら、何とかなっちゃって……そんで、俺は「今の俺」になったんだ。

シルフ

天族の王子には、イマガイに出て、人間の一生と同じだけの時間を過ごさなきゃならないっていう修行があって…それに、俺も騎士としてついて行ってさ、そこで友達とか出来て、今までじゃ考えられなかったような、幸せな時間を過ごしてさ……

シルフ

本当に…あの時は幸せだったんだ……

アルト

シルフ……でも、アルマにはその時の記憶が…?

シルフ

…………

シルフ

別に、今はそんな事どうでもいいんだ。そう。
俺が言いたいのは…あれだ。

シルフ

今がどんなに心配でも、当日は何とかなっちゃうってことだ!だから、そんなに重たく考えるな!!

アルト

シルフ……

アルト

うん、ありがとう…!
なんか、なんとかなる気がしてきた!!

シルフ

そうそう、なんとかなるって!
そんなもんだよ

シルフのその言葉には、妙に説得力がある気がした…うん、大丈夫…大丈夫…!!なんか自信が出てきた!!

アルト

俺、明日頑張るよ…そうすれば、ちょっとは頼れるようになるだろ?

シルフ

それはどうかなー?
アルマも俺も、素が結構強いから…

シルフ

まあでも、何もできないよりかは、少しでも頼れる方がいいだろうな。これから、機会があれば頼らせてもらうよ、アルト。

アルト

……ああ!!

アルト

で、あの…さ、シルフ

シルフ

うん?

改めてこんなこと言うのも、なんか小っ恥ずかしいや…でも、今を逃したら、一生伝えられない気がする…だから、今言わなきゃ…!

アルト

シルフさえ良ければ、だけど…

俺と、友達になってくれないか?

ーー五年前・盗賊団のアジト

親方さん、親方さん!!!いや、死なないで…親方さん!!

ああ、ネプテューン……すまないなぁ…俺も、老衰にはかなわねえってこったなぁ……

親方さん!やめてよ…不吉なこと、言わないでよぉ…!!私、あなたがいたから…あなたがいてくれて、世界を知ることが出来たの…!あの時、あなたが教えてくれたから…団のみんなにも…ウィルにも会えたの…!親方さん…行かないで…置いてかないで…!!

ネプテューン……ごめんな…本当に………ありがとうなぁ……

親方…さん…

………団を……俺の………家族を……頼む…………よ……………

……………………

親方………さ、ん……?

親方さん!!親方さん!!!いや……いやあああああああ!!!!!

ウィル

………ネプテューン……?入るよ。

ウィル

ちょっ……!?ネプテューン、その姿…!?

………違うよ、ウィル…私は………いや、「俺」は……

ネプト

………『ネプト』。ネプト・シャーウッドだ。

第六楽章 ネプト、還り咲く 3

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