それから一ヶ月が経ち、俺はデュエル会場へと赴いた…この一ヶ月間、できる限りのことはやって来た…大丈夫、アルマを倒すことは出来なかったけど…まだ、アルマにさえ明かしてない札がある。最悪、それを使えば…。
それから一ヶ月が経ち、俺はデュエル会場へと赴いた…この一ヶ月間、できる限りのことはやって来た…大丈夫、アルマを倒すことは出来なかったけど…まだ、アルマにさえ明かしてない札がある。最悪、それを使えば…。
やあ、一ヶ月ぶりですね…男娼くん?
っ……!
いやぁ、まさかあなたがそこまで卑しい身分の者だったとは…どうやって王子を誑かしたのです?色仕掛けですか?
……るせえ…
……益々、あなたをこのデュエルに勝たせるわけにはいきませんね…殺す気で参りますので、そのつもりで
早速精神攻撃を噛まされて少し参ったが…あいつの目は本気だ…本気で、俺を殺しに来る…!
始めっ!!
審判の掛け声で、俺は一気に距離を詰めた…しかし、読まれていたのだろう…赤帽子は己の得物で軽々と一撃を跳ね返した。
そんなものですか…何だか拍子抜けですね!!
グランド・クラフト!!
赤帽子が唱えると同時に、俺はその場から逃げるように走り出した…そんな俺を追尾するように、地面から鋭利な岩が突き出してくる…!
魔法の知識は着いたのですね…ですが…
俺の進行方向に、突如岩の壁が立ちふさがった…思わず足を止めてしまい、俺はあっさり岩の壁に包囲されてしまった…!
グランド・クラフトには、こういう使い方もあるのですよ?
逃げ場を失ったようにも思えたが、まだ1ヶ所空いている…!
上…!!
ああ、上も塞がなきゃいけませんでしたね…
アラクネズ・ウェブ!!
しまっ…!!
空中では動きの修正なんて効かない…!頭上に張られた蜘蛛の巣に突撃し、俺はその場で動けなくなってしまった。
全く…王子は血迷ったとしか思えませんね。こんな雑魚を騎士にしようだなんて…
束縛を逃れようと必死に踠くが、糸は余計に絡みついてくる…!
さて、こんな馬鹿らしいデュエル…さっさと終わらせましょう
さようなら、男娼くん
ッ!!
スプラーー!!
フレイム・ウェーブ
俺を拘束する蜘蛛の巣は、瞬時に炎に包まれた…
シルフ!!
アルマの悲痛な叫び声が聞こえる…あいつの事だ、俺に駆け寄ろうとでもしたんだろう。衛兵の天族に取り押さえられている姿が見える…。
そんなに心配しなくたって…
……大丈夫だっつの
なっ……!?
激しく燃え上がっていた炎が掻き消え、赤帽子の顔に動揺が浮かぶ…やっぱり、これは予想していなかったか。
おい、お前…名前は?
………は…?ど、どうして…
名前を聞いてんだよ…お前、名前こそ呼ばないけど、俺の名前知ってんだろ。名前も知らない相手に、一方的に名前を知られてるなんて気持ち悪いからな
今はそんな事どうでも…!
あっそ。じゃあ、さっさと終わらせてゆっくり聞くとするか…
俺は武器を持った右手を前に差し出し、呪文を唱えたーー。
ーーグランド・フィナーレ
バカシルフ!!
いっ…づ……!!悪かったっての…
デュエルを無事に終えて、俺は涙目のアルマに叩かれながらやけどの手当を受けていた。咄嗟に防御したが、やっぱり間に合わなかったようだ…。
こらアルマ。ダメでしょう、人を叩いちゃ…
でも…
この人は、アルマの母親で、スカイライン女王のヴィーナ。彼女はちょっと変わった人…というか、かなり変わった人で、俺のことをすんなり受け入れてくれた。アルマ曰く、『生きとし生けるもの、その全てが家族』がポリシーなんだそうだ。
ごめんなさいね、シルフくん。でも、あなたも無茶はいけないわ。魔法が使えるようになっていたのなら、ちゃんと言わなきゃダメじゃない
………ごめんなさい
僕まだ信頼してもらえてないのかと思っちゃったよ…あれ、信頼してもらえてるよね、僕…?
してる…でも、その……
でも?
………驚かせたかった……ごめん……
ーーっ!!!
アルマは急に顔を真っ赤にさせて顔をそらしてしまった。それを見て、ヴィーナは口に目を当ててクスクスと笑った。
あ、アルマ…?ごめんな…そんなにショックだったか…?
本当、シルフくんは可愛いわよねぇ…
母さん!?な、何言って…!
さてと、手当終了っと…ルークさん、ずっと待っててくれてるみたいよ。早く行ってあげなさい
ルーク?
あら、名前知らなかったのね…さっき、シルフくんと戦った騎士候補の人よ
あいつ、ルークって言うのか…ヴィーナさん、ありがとうございました。アルマ、行くぞ
う、うえ!?あ、あああ、う、うん!!行こう!!!
アルマは真っ赤になった顔をパタパタと手で仰ぎながら、俺に続いて部屋を出たーー。
本当に…いいお友達が出来たわね…アルマ