ルーク

遅いです

シルフ

悪い

アルマ

………

赤帽子ーールークは、ロディの部屋の前で待っていた。

シルフ

結構やったはずだが…もういいのか

ルーク

ええ。生憎、私はあなたと違って回復魔法にも精通しているので

アルマ

……わかってるんだったら殺しにかかるなよ…

ルーク

……はぁ……ほら、行きますよ

ルークが軽く戸を叩き、すぐに中から返事が来た。彼は1度俺たちに目配せをし、そのまま中に入って行く…。

ルーク

失礼いたします

ロディ

ああ、カエサルの…アレの様子はどうだ。もちろん、今日のデュエルにもお前が勝ってーー

ルーク

それが……

アルマ

デュエルはシルフが勝ったよ

ロディ

………なんだと?

よほど予想外な事だったんだろう、ロディは目を丸くしてアルマを凝視した。

アルマ

シルフは弱くなんかない…これで証明されたでしょ、父さん

ロディ

………

ルーク

ええ…これは私も認めざるを得ません。彼は私より強かった…私に勝ったということは、恐らく王子よりも…

ルーク

それに…王子は彼に絶大な信頼を寄せている模様です。これほどまで適任な騎士は、他にないと存じ上げます

ルークは忌々しげに言う。しかし、デュエルでぶつかる前よりも、俺に向けられる目線が柔らかくなったように思える…ちょっとは認めてもらえたってことか…?

ロディ

………カエサルの…お前が油断していただけではないのか?

ルーク

………ええ、それもあるでしょう。私とて、まさか負けるとは思いませんでしたからね…ですが、彼の強さは本物です

ルーク

ロディ殿下…彼は、複合魔法を扱えます

ロディ

複合魔法…!?

複合魔法?

シルフ

アルマ…複合魔法って、なんだ?

アルマ

え!?知らないで使ってたの…?

シルフ

え、いやだって…俺が使えるのはただの魔法だけだし…

アルマ

ただの魔法って…きみ…

アルマ

複合魔法っていうのは…魔法には、エレメントからなる属性がついてるっていうのは知ってるよね?

シルフ

ああ、本で読んだ

アルマ

魔法を使うには、生まれつき自身に宿った魔力と、そのエレメントと調和させて具現化させなければならない…そこまではいいね?

シルフ

……?……大丈夫、多分…?

アルマ

そこからかぁ…

アルマ

とにかく、魔法を使うにはエレメントの力が不可欠で、それを微調整することによって、様々な効果がえられる。さっき母さんが使ったケルトも…あれは光のエレメントを用いた魔法だ。

アルマ

本来なら、魔法は一つのエレメントからしか力を借りることが出来ない…下手に二つ三つから同時に借りようとすると、暴走しかねないくらい膨大な魔力が放出されちゃうんだ。

シルフ

ふーん…でも、さっき俺が使ったのは…

アルマ

そう…さっき君が使った魔法…スプラ・ソニック…あれは、水と風の二つのエレメントの力を使っている。さらに言うと、グランド・フィナーレ…あれは、大地と物理の組み合わせ…本来なら、出来るわけがないものなんだ。

シルフ

なるほど…あれ、それもしかして、俺かなり危ないことしてたのか…?

アルマ

うん…本当にね…!

ロディ

おい

急に声を掛けられ、俺は小さく肩を揺らした。恐る恐るロディの方を振り向くと、彼は至極嫌そうな顔でこう問いかけた。

ロディ

複合魔法を使ったと言ったな。マジリスクの影響は一切受けていないように見えるが…どうなんだ?

マジリスク…確か、魔法を使ったことによる負担のことだったか…

シルフ

マジリスクは…そんなに高いものだとは思ってませんでした。現に、何も感じてませんし…

ロディ

…………

ロディ

……二週間後、マジナイトの階級試験がある。それを突破して見せろ

シルフ

マジナイト!?

アルマ

そんな…!?

アルマ

そんなの無茶だ!!シルフは…魔法は使えても、戦いはまだ…!!

ロディ

王族の騎士となるんだ。そのくらいできて当然だろう?それすら出来ないのなら、認める認めない以前の問題だ。

アルマ

でも…そんな急に…!

ルーク

……………

ロディ

怪我をする前に辞退するもよしだ、だが、その場合お前には出ていってもらうぞ。魔族なんぞに情けをかけてやるほど、私は寛大ではない。

ロディ

よく考えることだ。

そう言い放つと、ロディは俺たちを部屋から追い出した。アルマは悔しげに目を伏せ、その場から動けないでいた…。

ルーク

随分無茶な注文が来ましたね。どうするつもりです?

シルフ

…………

アルマ

っ…………

ルーク

……今回の階級試験は、今までで一番の難易度だと聞いています…あなた一人で挑むのでは、かなり無謀ですよ。

シルフ

わかってる…でも…

ルーク

…マジナイトの階級試験、私も受ける予定があるのですが

シルフ

…?

ルーク

何しろ、難易度云々の話で皆怖気付いてしまって、ろくな練習相手がいません。

ルーク

どこかに、強いまでは行かなくとも複合魔法対策の相手になってくれるような練習相手はいないでしょうか?

シルフ

…!

アルマ

ルーク…キミ…!

ルーク

言っておきますが!!あくまでも私の為です!!足を引っ張ったら承知しませんからね!!!

シルフ

そりゃあもう存分に

ルーク

少しは掛けない努力をしなさい!!!

ルークは少し顔を赤くして、俺達に手を差し伸べてくれた…アルマは権力しか見えていないって言ってたけど、多分こいつは、本当にアルマのことを考えてくれているのだろう。そうでなきゃ…こんな汚れた魔族に、手を差し伸べようとなんてしないだろう。
その後、俺は早速ルークと訓練所に向かい、早速足を引っ張たのであったーー。

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