最強のトイを持ち!
女邪神マーヤを討たんと欲し!
意気揚々と家を出でたる
いと稚き勇者!
その名こそは呑竜カケト!
最強のトイを持ち!
女邪神マーヤを討たんと欲し!
意気揚々と家を出でたる
いと稚き勇者!
その名こそは呑竜カケト!
くっそーっ! ここ! どこだ!?
おお!
かようのこともやあり得るか!
勇者は現在!
道にぞ迷ったる!
なんや、困っとるようやな。
カケト、お晩。
ゼウス!
ひっさしぶりだなあ……!
せやろか? トイファイトしたのは、だいぶ前やけど、時々LINEとかしとるやないか……
へっへ!
でも実際顔合わせるのは久しぶりだぜ! なあ、元気だったか?
おう! ぼちぼちでんな~
……で、自分どこ行こうとしとるんや?
そうだ! 群馬に行くつもりだったんだ! なあゼウス、群馬ってどっちかわかるか?
おう。連れてったるで。車乗りいや。
やった! ゼウス、サンキュな!
群馬県!
赤城山! その山道!
……は~。せやったんか~。あの有名な世界三大不審者『全裸超絶技巧刀鍛冶らら子』が、あの真面目ぽそーな姉ちゃんのオカンやったんか~人は見かけに寄らへんな~
世界三大……!? ただの全裸の人じゃなかったのか!?
ただの全裸の人でも十分ヤバいで。
てかカケト、無茶もたいがいにしいや。自分トコの家から赤城山の山頂って、歩きで行ったら死ぬで、ホンマ。
ああ。こんなに遠かったんだな……ゼウスに会えてよかったぜ、ほんとに!
ゼウスの運転する車!
その前方!
赤城山の山頂付近に!
ヘリが着陸する!
機体には瀟洒な百合の紋章!
お? どうやら、昔なじみに仰山会えそうやな……!
やあ。ゼウスにカケト。
来るだろうと思ってたぜ!
世界を滅ぶに任せる道理はないからな……!
そうなっては、いくら金を稼いでも同じことだしね……
世界が滅ぶと遊べない。マーヤには悪いが、私としても邪魔せずにはいられない……!
みんな! 会えて嬉しいぜ!
久しぶりやな! 庭師の兄ちゃん! ワイのこと覚えとるか?
…………すまない。私は大人に興味がなくてね。おそらくは、かつてのトイファイターだろうが、君らが大人になって三日もすると、私の記憶からは抜け落ちてしまうのだ。どなたかな?
なんや、わからへんのかいな! 薄情なやっちゃな!
……ゼウスや、サンダーイーグルを使っとった。こう言やわかるやろ?
……ああ。ゼウスか。彼は強かったな……!
彼って……目の前におるんやけどな……
私にとってのゼウスは、トイで遊ぶ子供だ。大人の君と結びつけることは難しい。不快に思ってくれて構わないよ。
……いや、許したる。あんたはそういう奴やもんな。あるいはそういう「現象」とかそういう「概念」っちゅうところか。
火の中に落とした紙に「燃えたらアカン!」ちゅうたって、燃えちまうのと同じことや……
素早い理解に感謝する。
理解はすれども、あんたの在り様に賛成はせえへんで。元トイファイターが自意識こじらせることが結構あんのも、割と仕方あらへんトコあるで、まったく……
不意に轟くエンジン音!
見れば空には星間ロケット!
機体にはゲルマニア宇宙軍の紋!
……殿下。皆さま。世界を頼みます。
むろんだ、ギュンター。おねえさまのことは、ぼくがなんとかする……!
オスカーも来てくれたんだな! ありがとう!
わが家のもんだいを、たにんにおしつけるわけにはいきませんからね……!
……さて。それではワープゲートをくぐるとしよう。
……っふぅ。ようやく見つけたぞ! 天狗の法力によるワープゲート!
……キティ卿、ヴァルハラから私が見えるか? すまななかった。共に戦えなくて。卿にはいつも世話になっていたというのにな……
ラプラスの内心に!
キティとの思い出が去来する!
世話になったというより
世話をしていたのではないか?
同居時代の家事分担を思い出し、
ラプラスは不意にそう思った。
――はっ!
いかん! こんなものは騎士として恥ずべき考えだ! いざや戦場へ赴かん!
ラプラスは!
リッターホルンを吹き鳴らす!
お。プリンちゃんやないか。
ほんとだ! ひっさしぶりだなあ……!
治天下ゼウス! 呑竜カケト!
ごくろうだ、ラプラス。そなたのこころいき、たいしたものだ。だが、ひくがよい。つうじょう戦力によっては、この戦に勝つことはできぬ。
はっ!? 殿下!? いや! しかしですね、私は騎士として戦場に赴かねば……
そなたがいまだゲルマニアの騎士であるのなら、ぼくのめいれいにしたがうべきだ。そうでないのなら、戦場におもむくひつようはない。
いいな?
そんな……お慈悲を……
愚かな騎士だ。そなたのようなものに禄を食ませるとは、オスカーも懐が深い。
生きながらえよ、との慈悲を何故受け取らぬ。華々しき戦死に価値など無い。
この世がクソだってのには同意だけどさ、そう積極的に死にに行かなくてもいいんじゃん? どうせ僕らがしくじったら、この世界は滅ぶんだろうし?
……もう世界は相当めちゃくちゃなんだ。どうにかするのを手伝ってあげたら? ま、僕と君は関係ない同士だから、わかってもらえなくてもいいけれど。
俺はもう言うこと思いつかないぜ!
ラプラス卿、俺と来ないか?
そこの貴公子の言った通り、世の中は滅茶苦茶でな。ゲルマニアは特にひどい。人材不足なんてものじゃない。俺に命令権はないから、無理強いはできないが……
こういうのもアリやで。「世界全廃を企む邪神なんて荒唐無稽なモンは、子供に任して、大人のワイらは高みの見物と洒落込む……」
……くそっ! どうして! どうして私は!
いつもこうタイミングを逃してしまうんだ!?