タチアナ

……あーあ……さい、ごに、大、貴族、金、髪、美ショ、タの、ちんちん! しゃ、ぶり、たかっ、た、なあ……

マーヤ

Scheiße…………

らら子

やった! 完成!

オズヴァルト

ふーむ……ですが、もう少し強度が欲しくありませんか……?

サクゾウ

ああ。
だが、鋼鉄部品を使えば重量が問題になる。

マンフレート

強度とこの軽さを両立させる素材は、今のところ実在しないからね……理想の素材を研究開発する時間はないし、これはベストでないにせよ、ベターといったところじゃないかな……

らら子

うーん……

………………

らら子

ちょっと待って!
通りすがりのアイドルちゃん!

エラ

驚いたなあ。ニカブ被ってたのに、どうしてボクがアイドルだってわかったの?

らら子

だって私は刀鍛冶だからね!
ね、腰に差してるその刀、見せてくれない?

エラ

いいよ☆

国定忠治の長ドスを!

エラはらら子に渡す!

らら子

……やっぱり。

らら子

ね、アイドルちゃん。この刀、私にくれない? これを材料にして、私おもちゃを作りたいの。

サクゾウ

刀を材料に!?
しかし鋼鉄部品を使えば重量が……

らら子

普通の鋼鉄ならね。でもこれ、この世の、現実の金属じゃないし。
これは、江戸時代のヤンキー伝説に出てくる国定忠治が使っていた刀。忠治の見た、途方もない夢で出来た刀。
想像力の及ぶ限り、どんな特性にも変わってくれる夢の金属だよ。

ヤンキー聖文書!

7章第12節!


「忠治の夢見ること、

公儀・朝廷をも己がパシリとせむ。

大言壮語も甚だしい、

狂気とまごうばかりの夢なり。


壮大なる夢は

げに恐るべき巨大さゆえに

その質を変化させ、

ついには刀にその身を変えり」


おお! おお! おお!

ああ! 神々よ! こは真かや!?

伝説は本当なのか!?

この世の物では再現し得ぬ

超性能の金属の存在さえも!

オズヴァルト

なるほど。それなら、最高の素材となることでしょうね。

マンフレート

そんな超素材を使えるなら、基礎設計を一度見直してみるよ……!

エラ

ちょっと待ってよ! その刀はボクが拾ったんだよ! 勝手に使うとかやめてくれる!

らら子

かわいいアイドルちゃん、おねがい♡
この刀ちょーだい♡

エラ

おっけい☆

サクゾウ

なら、なんでさっきは反対したんだい?

エラ

気☆分♪
もともと、なんかヤバそうだから持ってきたものだしね。世界を救うおもちゃの材料になるなら、拾ったボクとしても大歓迎だよ☆

その夜!

地球! 日本国!

呑竜家!

カケト

じゃあな! かあさん! レン!
おれ、ちょっくら月に行って、オスカーの姉ちゃんをやっつけてくるからさ!

ヒロミ

何言ってるのカケト! 世界中の軍隊や警察ががんばってることなのよ? あなたが何をできるっていうの。少しは現実見なさい。

カケト

世界全廃とか、めちゃくちゃイカれた事件なのに、まっとうに現実見たってしょうがないだろ!

レン

そういう考え方もあるかもしれないけどさ……僕はカケトにケガしたり死んだりしてほしくないよ。

カケト

レン! けど! このまま何もしないでいられるかよ! 世界がもうすぐ終わっちまうかもしれないのに!

ピンポーン♪

ヒロミ

はーい、ただ今。

サクゾウ

こんばんは、ひーちゃん。

ヒロミ

あらまあ、サクさん! どうしたんですか……?

らら子

妻も一緒でーす♪

ヒロミ

ああ奥様。これはどうも。お宅のご主人にはいつもお世話になっております。

かや子

……私もいる、けどわざわざ存在感アピールしなくてもいいか……

サクゾウ

ちょっと、君の息子の手伝いがしたくてね。世界を救う手伝いがさ。
カケト君はまだ起きてるかな?

カケト

起きてるぜ。
おっちゃん、おれになにか用事?

サクゾウ

新しいヨロイビートルを届けたくてね。
ドラゴファイアの弱点を改良して、夢由来の超金属を使って作った、最強のヨロイビートルだ。あるいは最強のトイかもしれない。
――ドラゴエンペラーだ。

カケト

ドラゴ、エンペラー――!?

カケトはサクゾウから!

ヨロイビートルを受け取る!

世界を統べる竜と!

皇帝の名を持つトイを!


ドラゴエンペラーを手にした瞬間!

カケトの身を電流が駆けた!

途方もない野放図さを持つ夢の!

歓喜すべき可能性に!


起こり得るすべての神秘が!

ドラゴエンペラーの機体にぞ!

秘められているかのごとき錯覚だ!

カケト

う、うおおおおおお!

カケト

おっちゃん! これ! すげえよ!
このトイもおっちゃんが作ったのか!? おっちゃんすげえなあ!

サクゾウ

何、俺は別に大したものじゃないさ。ただ、俺の周りにはすごい奴がたくさんいてくれる。そいつらが手伝ってくれたから、俺はすごいものを作れたのさ。

カケト

こんなのがあったら絶対マーヤに勝てる! なくてもやるつもりだったけど!
おっちゃん! かあさん! レン! かや子! かや子のかあさん!
おれ! 月に行ってくるよ! マーヤをとっちめる! みんながいてくれる世界を終わらそうだなんて、おれはみとめねえ!

サクゾウ

おう! 応援してるぞ!

ヒロミ

……もう、止めても無駄でしょうからね。気をつけてらっしゃい。ハンカチとティッシュはちゃんと持っていきなさい。

レン

何も策がないなら止めるつもりだったけど……新型とカケトの力なら、きっとやれるよ。

かや子

気を付けてね。ちゃんと、帰ってくることを考えるんだよ? 
無事に帰ってきたら、唐揚げでもハンバーグでもなんでも、好きなごほうびあげるからさ。

らら子

ふぁいと♡ ふぁいと♡

らら子

ところで奥さん。あのカケト君、って子のことだけれど。

ヒロミ

うちの子がどうかしました?

らら子

あの子のお父さんは誰なのかなあ?

ヒロミ

……とてもいい人です……最近では、あの子と遊んでもくださいますし。

らら子

その言い方は、私の想像通りで合ってるってことかな♡

かや子

……そういえば、私なんでカケトのこと心配しちゃうんだろう……? お父さんの世話に慣れすぎちゃったかな……?

サクゾウ

よし! おそらくは立派な大人として、カケト君に接することができただろう! 
……どうも俺はヒモ体質が抜けないというか、女性には基本的に甘ったれてしまうから、娘には苦労をかけてばかりだが…………
息子がいたのなら、俺も違ったのかもしれんな……

トイファイターズ! 十一 ~夢を遊ぶ者ども~

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