洞窟から出て、長く高い道のりを乗り越えて行く。山も頂上の方まで来た所で、振り返って国の方を見る。ここから見る国は、さほど慌てていないことが分かった。所詮、虫けらが二匹消えただけか。それくらいじゃ動かないわよね。視線を城の方へと戻し、私達は歩いて行った。

 城へ着くと、門には多くの鎖が絡みついていた。まるで、ここへ入ってはならないというかのように。彼は一瞬たじろいだけれど、意を決したのか、私の目を見て頷いた。

 私も頷くと、背負っていた大きなカバンを下ろす。そこからマシンガンを取り出して深呼吸し、引き金を引くと一気にぶっ放す。ある程度良い所でマシンガンを下ろすと、入口の扉は鈍い音を立てて後方へ倒れた。と、同時に大量のホコリが舞い、私達を襲う。私達は咳こみながら、手を振ってホコリを飛ばした。

行きましょう

 ホコリが落ち着いた所で、私は彼に言う。彼も頷くと、腰に携えていた剣に手を添えた。

 やはり。近付く度に感じていた。この城に、私の求める何かがあると。その何かが私に何をもたらすかは分からなかった。けれど、ここへ来れば良くも悪くも私の人生が動き出す。そんな気がした。

 鎖がかかっていただけあり、中には当然誰もいない。何年間も放置されていたらしく、クモの巣が幾らでも張ってある。決して長居したい場所では無い。足元も腐敗している場所があるな。気を付けて歩かないと。

うわぁっー!!

 隣から叫び声がした。まさかと思って隣を見ると、そこに彼の姿はもう無かった。その代わりにあったのは、ぽっかりと穴の出来た床。下を見ると、真っ暗で見えない程深いらしい。

 むごい、この深さではきっと……。心の拠り所を一つ失って激しい焦燥感が襲ったが、このままずっと下を向いていては、ここにきた意味が無い。それに、もしかしたら、もしかしてと言うこともある。そうよ、彼ならばもしかしたら。私は立ち上がり、上の階を目指した。

おや。随分遠い所からやって来たんだねぇ

 階を上がったすぐ後、どこからともなく声が聞こえてくる。これは紛れもなく、奴の声。周囲を警戒して見渡す。

折角一緒に来た仲間をやすやすと見捨てるなんて、流石は国の娘らしいよ

そこか!

 木目調の、窓を隠すかのような小さな扉を手前に引く。すると、中で丸まって座っていた金髪の男が現れ、私を嘲笑った。

君はそうやって、他人を痛めつけ、屍を踏んで、生きて行くんだ

黙れっ!!

 私はマシンガンを構え、そいつに向けてぶっ放す。弾丸が当たった瞬間、奴は姿をアメーバ状に変えて私の前から消えさった。やはりそうか。奴は、人間では無いと確信していた。奴は人間と言う類を超えた、もっと違う何か。

 奴の声が聞こえた瞬間、鼓膜が引き千切れそうな程動揺した。心臓もバクバクと震えている。ふぅと深いため息をした瞬間、不快な声がまた聞こえてきた。

それで終わりと思ったかい?

 声が聞こえた瞬間、次に声の聞こえる扉を開く。そこには奴がいて、先程と同じく私を嘲笑う。その顔を消しさるかのように、私はマシンガンを撃った。奴は姿を変え、不気味な笑い声を残して消えさった。

 一息つく間など無い。この部屋の中にはこの異様な木目調の扉が幾つもある。それに、城と言うだけあり、階数もまだまだありそうだ。私は、夢のように何度も奴と顔を合わすことになる。ギュッと唇を噛む。

 それでも、私は進まねばならない。弾丸は腐る程詰めこんで来た。長期戦も予測済みだ。扉を開け、また奴を撃った。撃った。撃った。

無駄だよ。君は僕に殺される運命なんだ

 マシンガンで撃った瞬間、背後から声が聞こえてきた。まさか! 振り返った時には、既に喉元に両手が伸びていた。

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