私は、彼と一緒にこの深い洞窟を歩いていた。暗くて、デコボコで足元の悪い場所だ。
彼とは、先程偶然出会った青年だ。ブロンドで後ろ髪にリボンを付けている、人呼ぶ”お嬢様”の私とは違って、少々みすぼらしい服を着た、顔に泥の付いた茶髪の青年。農家の者だそう。
私達が住んでいた場所は、国家が全てを占めている。彼のような平民からは売り上げを殆ど奪い、自分達はその蜜を余すことなく吸い尽くす。楽な立場である。
彼があの国を逃げ出したのは、それが理由だったらしい。彼は幼くして親を亡くしているので、身を案じる者は自分しかいないのだとか。
対する私は、むしろその甘い蜜を吸っていた側の人間。それに不満など無かった。美味しい物を食べられるし、綺麗なドレスだって何着も着られるから。