作業はその後順調に進んだ。街の者達が話を聞きつけ人手が増えた事も、早く作業が終わるという良い結果に繋がった。
作業はその後順調に進んだ。街の者達が話を聞きつけ人手が増えた事も、早く作業が終わるという良い結果に繋がった。
あなた達のおかげで安全に
あの場所を通れたわ。
礼を言うわ。
礼なんていいっすよ。
ほら、妹さんも待ってる筈だから
早く水を汲みに行く方がいいよ。
ええ、そうさせてもらうわ。
ユフィは目を細め、三人に手を振った。しかし三人はユフィと同じ方向に歩く。
何故ついてくるの?
自分達も行くっすよ。
夕日もすっかり落ちたもんね。
一人じゃ、危ないよ。
乗りかかった船だからな。
ほんと、あなた達って馬鹿ね。
普段はツンとしているように見えるユフィ。そのユフィの笑顔を受けて、三人の表情も明るくなった。
夜の山道を行く四人は、この後、難なく清流に辿り着き水を汲む事が出来た。そしてベインスニクの街まで戻ってきたところだ。
っつぅっ!
メナ、どうかしたの?
脚が痛むっすか?
もしかして、
朝の土砂崩れの時に痛めたのか。
ドジだね、私って。
いつも皆の足を引っ張ってばかり。
痛む脚をさするメナは、申し訳なさそうに言った。
それって、
私を庇ってくれた時の……。
どうやら足は軽い捻挫だったようだ。しかし朝からの重労働や移動に耐えきれなくなっていたのだ。
あなた達、
泊まる所は決まっているの?
いや、ないわね。それどころか
あまりお金もないでしょ。
なんとなくそんな気がするわ。
今日は私の家に来なさい。
ななな、なんで1ガロンも
持ってないの知ってるんですか?
まさかそこまでないとは
思ってなかったけど……
なら調度いいわね。
しまった。こんなに情けない
お財布事情を知られるなんて。
は、は、恥ずかしぃ……。
真っ赤に顔を染めたメナが恥じらうと、呑気な顔をしたリュウが口を挟む。
完全に自爆だな、今の。
まぁ、甘えりゃいいんじゃないか。
面白そうだから、俺も顔出すか。
自分は腹に物を入れれるのなら
どこにでも付いていくっす。
ハルのお腹の虫どもの声がうるさい事もあり、三人は、今晩ユフィの家に寄せてもらう事になった。
あ、お姉ちゃんおかえり~。
暖炉の明かりが広がる家。小さな煙突があり、リビングには幾つかの椅子とロッキングチェアーがある。家族で集まり食事をするのであろう、大きく丸いテーブルが目を引いた。どこかしら自然に茶の香りがする。そうユフィの家だ。
話し掛けてきたのは、ハル達よりも少し年下と思われる少女だ。お姉ちゃんというセリフからユフィの妹に違いない。
遅くなったわね、ネピア。
今日は客人が来てるわ。
お邪魔します。
って、この方が妹さん?
そうですよ。
ネピアって言います。
俺はリュウ。邪魔するよ。
ハルっす。こっちはメナ。
よろしくっす。
よろしく、ハルさん、メナさん。
リュウさんも
ゆっくりしていって下さい。
ネピアは血色が良く、声の張りも良い。自然な笑顔が可愛らしい。とても病気だなんて思えない。
さぁ、上がって。
すぐに夕食を作るわ。
ユフィはエプロンをササッとして、手際良く料理を始めた。リズミカルな包丁さばきは、遠目からでも大したものだと分かった。
出来たわ。
さぁ、食べましょう。
ええーっ! 速ーい!
速すぎるよ!
確かに半端なく速い。始めるのも速いし、手際も速い。メナが手伝うと言うつもりだったが、もうその頃には終わっていたのだ。
お姉ちゃんの料理は、
生ものばかりだから、
超速いのよ。
な、なるほど。それにしても
尋常じゃない速さね。
おおー! 旨そうっすねぇ。
さぁさぁ食べるっすよ。
料理は旨かった。ネピアも美味しそうに食べている。三人が居て賑やかなのか、笑顔が絶えなかった。
後片付けを手伝うメナは、料理の速さの一因を見た。ユフィの使った包丁が、物凄く切れ味が良いのだ。興味を持ったハルが聞いてみると、隣の偏屈な爺さんから、譲り受けた品という事が分かった。
壺ばっかり作ってる爺さんよ。
失敗作を叩き割ってる音を
聞かない日はないわ。
隣の爺さんの事を話すユフィの目は、憂鬱そうに見える。隣人の騒音に飽き飽きしていると言ったところだろう。
面白そうな爺ちゃんっすね。
まだ寝るには早いし、
ちょっと話聞いてくるっす。
それだけ言い残して、ハルは扉の外に消える。不安しか湧いてこないメナは、後を追いかけることにした。