町を出発した俺たちは馬車の上で揺られていた。
ともかく時間は限られている。一刻も早く目的を果たさねば。
で、ゼロ。次の目的地はどこなの?
町を出発した俺たちは馬車の上で揺られていた。
ともかく時間は限られている。一刻も早く目的を果たさねば。
獅子の国だよ。
獅子王に会って助力を乞う。
そう、俺の名前はゼロだ。
何者にでもなれるとも言えるし
何物にもなれないとも言える、そんな名前だ。
…簡単に言うじゃねぇか。
いけるのか、それ?
それしかないんだ。
最短ルートだし、ついでに協力も得られれば上出来くらいに思ってるよ。
でもそれって生ける伝説アントニダスと同じルートね。
「失敗したルート」だけどな。今回はこのルートを使うしかないだろう。
-獅子の国-
この世界には人でない種族が多数存在する。例えば亜人、その中でも誇りに重きを置く獅子の亜人が暮らす町。それが通称「獅子の国」だ。
俺の住んでいた町から「人」の生活圏を越えて「魔王の領地」に到達するにはこの国を抜けるのが一番だ。
勝算はあるのか?
もちろん。
ア、アントニダス様の偉業を失敗扱いするなんて!無礼です!
会話に割り込んできたこの少女はシーマ。
今回の「魔王討伐遠征」に志願してきた勇気ある若者の一人だ。
小柄で華奢だがちゃんと主張するべきところは主張している、そんな感じだ。
アントニダス様は確かに魔王こそ倒していませんが、人間の版図拡大に多大な貢献をし、人の世に希望をもたらした英雄の中の英雄です!それを失敗だなんて!
悪かったよ…身内ネタのつもりだったんだ。
世間が言うような蔑みの意味なんかじゃない。
み、身内ネタ??
あー、もしかして募集要項とか深く見ないほう?
魔王討伐遠征と聞いて!
(面接したときはもっとしっかりした子だと思ったのに…)
身内も身内、ゼロはアントニダスさんの一人息子。正当な「勇者」の血統よ!
ほんとですかぁ~
(とんでもない子採用しちゃったかな…)
魔王討伐隊モシクハ勇者御一行ハ
ワタクシがゲンセイナルシンサのモト、
メンセツによってサイヨウシマシタ。
親父は十数年前の古傷で、もうまともに戦えない。だから息子の俺が旗印として「勇者」を名乗り正式な「魔王討伐隊」を結成したんだ。わかってくれるか?
(何それ美味しいの?
という顔をしている)
もしかして、あんた…
生粋の世間知らずかい?
生まれ故郷の田舎を出たのは
今回が初めてデス!
ははは!
何それ、かわい~い~!
世間の事情に疎いってことか。
以後気を付けよう。
いや、こりゃあ世間に疎いとかそういうレベルじゃないと思うぞ。
だよなぁ・・・
道はまだまだ長そうだ…