【79】





























ボクはサンディに連れられて
サン・デルモント駅にやってきた。


大きい街だけあって
駅も大きい。


一瞬、人ごみの中に
見知った顔があったような気がしたが

気のせい、か


そう言えばこの旅で
いろんな人に出会った。

またいつか会えるだろうか。

会いたくない人もいるけど











ほら、ルチオ。
あの汽車がキルバス行きだよ!


サンディが指さした先には
黒光りする汽車が停まっていた。

一緒に行ってあげられたらいいんだけど、ウチも爺ちゃんに薬届けに行かなきゃいけないからさ


サンディのお爺さんは
キルバスとは反対方向の村に
住んでいるらしい。

さっきの少年のところへは
その薬を買いにきたのだそうだ。

サンディはもう見つけたの?

うん

いろいろ見て回ったんだけど、ママのシフォンケーキが一番おいしかったんだ。
パオラのこと言えないね

……


そうなのかもしれない。
誰かが誰かのために作ったものが
きっと一番おいしい。




ボクは?
そんなお菓子に出会えただろうか。

その前になんでもいいから持って帰らないと、ってレベルなんだけど




汽笛が鳴った。
車掌さんが大声で発車すると叫んでいる。

あ、もう行くね

また町で会おうね

うん


ボクは
汽車に乗り込んだ。

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