霧裂 聡史

 この虹色の結晶、一体何なのか、君たちにはわかるかい?

 扉を開き、部屋の中に入るなり、いきなり、こちらを振り返り、両手を大きく広げて言った。

神裂 優斗

 これは、魔力の塊......。

 まさか!

霧裂 聡史

 そう、そのまさかだよ。

 これは、都市消滅時に発生する原因不明の魔力暴走と同じ性質の魔力だ。

神宮寺 瑞希

 そんな......。じゃあ、どうしてここは消滅しないんですか?

霧裂 聡史

 それは、簡単なことさ。

 何らかの現象によって、発生した魔力暴走を、何らかの方法を用いて結晶化させた。

 ということだ。

霧裂 静香

 要するに、何も分かっていないということでしょう。

 静香は、呆れた様子でため息を一つ吐く。

霧裂 聡史

 ああ、真相はまだ分からない。だが、分かったこともある。

 聡史が自慢げに話そうとしているところに、研究所内に突如として、けたたましいサイレンが鳴り響いた。

霧裂 聡史

 何事だ!

 大変です。施設から距離一キロの地点にエネミーを捕捉。数、50。

 え......。何これ、どんどん増えてます!

 真剣な表情をした聡史が、端末のモニターで慌しく何かを確認している。

神宮寺 瑞希

 霧裂博士。何かあったんですか?

 瑞希は霧裂に駆け寄り、モニターを覗いた。

神宮寺 瑞希

 こ……これは!?

 驚く瑞希に続いて、俺たちもモニターを見た。

 そこには、体が灰色に染まり、赤い目を怪しく光らせた異型の生物たちが群れをなして近づいてきていた。

神裂 優斗

こんな数、一体どこから……。

霧裂 静香

 私、一度に沢山発生したのは、初めて見ました。

 灰色の異型の生物の群れは、防衛に向かった

神裂 希

 これは……、霧裂博士。

 私はいつでも出られますが、優斗たちには危険です。

 私が一人で行くので、優斗たちには待機の命令を出してください。

 希が霧裂に言った。

霧裂 聡史

 しかし……。

 いくら君でも、あの数が相手では荷が重過ぎる。

神裂 優斗

 そうだ。一人には荷が重過ぎる。

 そして、希。

 俺たちを少し甘く見すぎだ。

 俺は、希のおでこを軽くデコピンする。

榊原 信也

 ああ、希ちゃんに心配されるほど俺たちは弱くねーよ。

霧裂 静香

 そうですよ。

 それに、私たちはチームです。

神宮寺 瑞希

 そうね。 ちょうど良かったんじゃないかしら。

 私たちの本気を出したところ。希にも見てもらっておかないとね。

 俺たちは、笑顔で希を見つめる。

霧裂 聡史

 良いチームだ。

 希ちゃん、このチームだったら隠さなくても良いんじゃないか?

神裂 希

 ......気が向いたら話しますよ。

 希が微笑見ながら答える。

霧裂 聡史

 是非そうしたほうが良い。

 チームを組むということは、自分のことも知ってもらう必要があるからね。

 霧裂が希に言う。

神裂 優斗

 大丈夫だ。話したくなったら話せば良い。

神裂 希

 ……分かった。

 この依頼が終わったら話せることは話すよ。

 希が俺に向かって言った。

神宮寺 瑞希

 そうね。 私たちからも聞きたいことが色々あるから。
 依頼が終わったら覚悟しておきなさい!

  瑞希が希の肩に寄りかかる。

霧裂 静香

 ズルいです。

 私も聞きたいことが沢山あります。

榊原 信也

 そうだな。

 お互いに聞きたいことがあるだろうし、この依頼は皆でクリアして皆で帰ろうぜ。

神裂 希

 はい!

 このとき、俺たちは希の過去について甘く見すぎていたのかもしれない。この笑顔の裏に過去が隠されていたとは……。

第四十七話:《蠢く異型1》

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