霧裂 聡史

 さて、昨日はよく寝れたかな?

 朝からテンション高いこいつとは違い、俺たちのテンションは最低値を示していた。

 朝5時から司令室に呼ばれ、おまけにこのテンションだ。

霧裂 聡史

 あれ? 信也君だったか?

 顔色が悪いような気がするのだが、どうかしたのかい?

榊原 信也

いえ、何でもありません……。

 そう、昨日信也はあのまま瑞希たちが入る大浴場に行き、覗きを決行しようとした結果、見事にばれてしまい、容赦の無い攻撃を三人からくらったのだ。

 まさに自業自得とはこのことだ。

霧裂 聡史

 そうか。てっきり大浴場に覗きに行ってばれたのかと思ったよ。

 「こいつ、勘が鋭いな。」

 この場にいる全員がそう思った。

霧裂 聡史

 じゃあ改めて、私の名前は霧裂 聡史だ。

 ここの司令長を務めている。ここでの研究は、皆がここに来るときにも見たと思うが、灰色の霧についての研究だ。

 皆には、今までの研究成果と今回の依頼について、まず工場見学をして貰おうと思う。

 霧裂は眼鏡を指で整え、俺たちに笑ってみせた。

神宮寺 瑞希

 見学ですか?

霧裂 聡史

 ああ、そうだ。

 これから、依頼を受けて貰うためにも、まず、基礎知識が必要だと思うんだ。

榊原 信也

 何か分かったんですか?

霧裂 聡史

 ああ。だが、これは最重要機密だから、決して他言しないでほしい。あらぬ混乱を招きかねないからね。

 真剣な表情をした霧裂の顔が、霧の情報の重大さを物語っていた。

神裂 優斗

 前置きはいいから、早く案内してくれよ。

 こっちは凄く眠いんだけど……。

 俺は、大きくあくびをした。

霧裂 聡史

 その眠気も一気に吹き飛ぶと思うよ。

 そう言って、霧裂は俺たちを研究棟に案内した。

 研究棟に入った俺たちは、その光景に圧倒された。

 ここは、研究棟というよりは、博物館と言ったほうが正しいような。

 天井が高く、床は大理石でできていた。

神裂 優斗

 この研究棟は、博物館だったところをそのまま使っているのか?

霧裂 聡史

 ああ、その通りだ。

 ここは元々、博物館だった場所だ。

 人が居たときは、それなりに賑わっていたようだけど、見ての通り、街は灰に多い尽くされてしまって、人も居なくなってしまったからね。ありがたく使わせてもらっているよ。

 それより、皆に見せたいのはこの奥なんだ。 

 霧裂は、奥の大きく頑丈そうな扉を開いた。

 そこは、今まで居た空間とは違い、大きく開けた空間で、中央には、七色に輝く、巨大な結晶の塔が聳え立っていた。

第四十六話:《中央管理都市ミスト・グレー3》

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