【70】































ボクたちは通りに面した店のひとつで
立ち止まった。

……ここか?

うん

ボクはドアを開けた。

入ってよ

お、お主から入れ

ボクが会いに来たわけじゃないもん

や、そうじゃけれども、でも、な、

……


この期に及んで恥ずかしいのか?



しかしこのままでは夜になってしまう。

入ろうよ

だから、先に

なにしてんのさ、店の前で

うひゃう!!

……おい

あれ? ……

返品はお断りだよ

違うって

それじゃ、

少年は女神を見た。

買い取り?

え? あ、ええと

違うってば。
この女神様が会いたいって言うから連れて来たんだよ

女神、様? なんで?

だからさ、会いたいって言ってたでしょ?

ボクが会いたいのは文通相手だ……け……ど?

え?

だからその相手

ええ!?


驚くのも無理はない。
女神が斧持って現れりゃあ、ね。


























そっか、それで来てくれたんだ

心配したんだよ? 返事が来なくなっちゃったからもしかして嫌われたのかな、とか思って

誘ったの、嫌だったのかな、って

誘う? なにをじゃ?

ハロウィンだよ。
ママがカボチャのムースを作るから、一緒にどうかな、って思ったんだけど……返事が来なくなっちゃって

キルバスの人にハロウィンなんて今更面白くないか、って思ったり

それは違う。
カボチャは好物じゃ

だが……手紙が届かなかったのじゃ

……


手紙は届いていたけど
部屋が汚すぎて失くしました。と
なぜ言わない。

楽しみじゃ、ママ殿のムース

うん

……

まぁ、終わりよければ全て良し
じゃないけれど

これはこれで
よかったんじゃないかな?

と思う。

じゃ、ボクもなにかお菓子探して帰るかな

もう行くのか?

うん。ちゃんとキルバスにもカボチャがなるようにしてあげてよ?

うむ。しばらくはやる気スイッチが入っておるからの

なにか買うくらいなら、うちのムース持っていけば?

え?

絶品だよ

ありがとう

それはこっちのセリフさ



今から帰ればハロウィンに間に合う。

ボクは急いで帰路についた。












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