「真実の鏡を盗みますかねー」
ふっふふ。猟師は上手くやったみたいね。まさかあの子の心臓を持ってくるだなんて。これで私が一番よ。
よかったですね、王妃様。ではさっそく、鏡に問うてみますか?
ええ、もちろん。……鏡よ鏡、この世で一番美しいのは私?
いいえ、王妃様。それは猟師永遠の二十歳男性の家に暮らしているヴァイネ様です。
……え? なんであの子が生きてるの?
それはヴァイネ様とシェーン様が駆け落ちをしたからです。
駆け落ちですって!?
じゃ、じゃあ、あの心臓は?
それはシェーン様が取ってきた、豚の物です。
あ、あ、あのやろーー!
結局皆ヴァイネのところに行くのね! もう、どうしてやればいいのよ!
王妃様、私は王妃様の味方です。……この櫛と、腰紐と、林檎をお使いください。
大臣……!
この櫛には、毒が塗ってあります。これで頭を刺せば一発でしょう。それが上手くいかなければ、この腰紐で思いっきりきつく縛ってください。それも受け付けないほど慎重な場合、こちらの毒林檎を与えてください。これは、赤い所のみ毒があり、白い所は安全です。
そうね、もう私がやるしかないわね! よーし、やってやるわよー! ありがとう、大臣!
……計画通り。
あー、ほんっと上品な振りは疲れるなー。まあ、目的のためならやってやるけどよ。
……さて、
「真実の鏡を盗みますかねー」
その後、王宮内で大臣の姿を見たものはいなかったという。
あー、かったるい。
猟師が狩りに行っている時間帯。家事全般をやり終えたヴァイネは、素でいられる時間を満喫していた。
あ、はーい。
流れの商人でもやってきたのだろうか。鍵を開け、扉を開く。
どうも、お嬢さん。私は商人よ。
この声……お母様!? なんでここに?
あ、あらそう。で、どんな商品があるのかしら?
まずはこれ、櫛よ。これは梳かせば梳かすだけ髪が美しくなるわ。
ふーん。……おいくら?
え?
これの値段よ、値段。
え、えーっと……銅貨五枚ね!
そ。次。
つ、次ね。これは、色とりどりな腰紐よ。普段は一本銅貨二枚なのだけど、今ならなんと! 五本買うともう一本追加しちゃうわ。
別に。いらないし。
お母様、私はあなたと違って見た目に興味ないの。どうせなら甘味とかないのかしら……ここのところ肉多いし。
えぇ……これでもだめなの? じゃ、じゃあとっておきを出しちゃうわ。
これは紹介状が無いと入手できない、幻の林檎よ!
な、なにそれ。美味しそう。
今なら銀貨一枚でいいわ!
た、食べたい。でもお母様なら毒殺とか考えていそうだし……。
一口、食べてもらってもいいかしら。毒殺とか怖いからね。
ええ、わかったわ。
ああ、美味しい。
た、ただ様子を見に来ただけだった? ならいっか。
わかったわ。一つちょうだい。
まいどありー!
さーて、久々の甘味! いただきまーす。
――――!
おーほっほっほっほ。これで私が一番よ!
さ、早く帰らないとね。
どうかしたか、エクウス。
……女、か。白雪姫が始まっていたようだな。
ふふ、いい姿だ……。さて、連れて帰るとするか。