王妃

ふっふふ。猟師は上手くやったみたいね。まさかあの子の心臓を持ってくるだなんて。これで私が一番よ。

大臣

よかったですね、王妃様。ではさっそく、鏡に問うてみますか?

王妃

ええ、もちろん。……鏡よ鏡、この世で一番美しいのは私?

いいえ、王妃様。それは猟師永遠の二十歳男性の家に暮らしているヴァイネ様です。

王妃

……え? なんであの子が生きてるの?

それはヴァイネ様とシェーン様が駆け落ちをしたからです。

王妃

駆け落ちですって!?

王妃

じゃ、じゃあ、あの心臓は?

それはシェーン様が取ってきた、豚の物です。

王妃

あ、あ、あのやろーー!

王妃

結局皆ヴァイネのところに行くのね! もう、どうしてやればいいのよ!

大臣

王妃様、私は王妃様の味方です。……この櫛と、腰紐と、林檎をお使いください。

王妃

大臣……!

大臣

この櫛には、毒が塗ってあります。これで頭を刺せば一発でしょう。それが上手くいかなければ、この腰紐で思いっきりきつく縛ってください。それも受け付けないほど慎重な場合、こちらの毒林檎を与えてください。これは、赤い所のみ毒があり、白い所は安全です。

王妃

そうね、もう私がやるしかないわね! よーし、やってやるわよー! ありがとう、大臣!

ウンアンリッシュ

……計画通り。

ウンアンリッシュ

あー、ほんっと上品な振りは疲れるなー。まあ、目的のためならやってやるけどよ。

ウンアンリッシュ

……さて、

「真実の鏡を盗みますかねー」

 その後、王宮内で大臣の姿を見たものはいなかったという。

ヴァイネ

あー、かったるい。

 猟師が狩りに行っている時間帯。家事全般をやり終えたヴァイネは、素でいられる時間を満喫していた。

ヴァイネ

あ、はーい。

 流れの商人でもやってきたのだろうか。鍵を開け、扉を開く。

???

どうも、お嬢さん。私は商人よ。

ヴァイネ

この声……お母様!? なんでここに?

ヴァイネ

あ、あらそう。で、どんな商品があるのかしら?

???

まずはこれ、櫛よ。これは梳かせば梳かすだけ髪が美しくなるわ。

ヴァイネ

ふーん。……おいくら?

???

え?

ヴァイネ

これの値段よ、値段。

???

え、えーっと……銅貨五枚ね!

ヴァイネ

そ。次。

???

つ、次ね。これは、色とりどりな腰紐よ。普段は一本銅貨二枚なのだけど、今ならなんと! 五本買うともう一本追加しちゃうわ。

ヴァイネ

別に。いらないし。

ヴァイネ

お母様、私はあなたと違って見た目に興味ないの。どうせなら甘味とかないのかしら……ここのところ肉多いし。

???

えぇ……これでもだめなの? じゃ、じゃあとっておきを出しちゃうわ。

???

これは紹介状が無いと入手できない、幻の林檎よ!

ヴァイネ

な、なにそれ。美味しそう。

???

今なら銀貨一枚でいいわ!

ヴァイネ

た、食べたい。でもお母様なら毒殺とか考えていそうだし……。

ヴァイネ

一口、食べてもらってもいいかしら。毒殺とか怖いからね。

???

ええ、わかったわ。

???

ああ、美味しい。

ヴァイネ

た、ただ様子を見に来ただけだった? ならいっか。

ヴァイネ

わかったわ。一つちょうだい。

???

まいどありー!

ヴァイネ

さーて、久々の甘味! いただきまーす。

ヴァイネ

――――!

王妃

おーほっほっほっほ。これで私が一番よ!

王妃

さ、早く帰らないとね。

モルタニス

どうかしたか、エクウス。

モルタニス

……女、か。白雪姫が始まっていたようだな。

モルタニス

ふふ、いい姿だ……。さて、連れて帰るとするか。

第七幕「連れ去られたものは大切なもの」

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