穏やかな光に溢れる庭。そこに、鳥と話す少女がいた。彼女こそがヴァイネ、王妃が猟師に殺害を命じた娘である。
……へぇ、ついにお母様が私を殺すようにしているのね。ありがと、助かるわ。
ん? 心配してくれるの? ……大丈夫よ。だって、私だもの。
ふふふ。ばいばーい。
穏やかな光に溢れる庭。そこに、鳥と話す少女がいた。彼女こそがヴァイネ、王妃が猟師に殺害を命じた娘である。
あら、来たみたいね。
……!
数歩先に立ちすくむ男。彼に、できる限り可愛げのある、庇護欲をかきたてるような顔を作って振り返った。
あら、どなた?
ぼ、僕は……。
その時、ヴァイネは勘違いをしていた。男が固まる理由に。彼は、己の美しさゆえに殺すのをもったいなく思っているのだろう、と。
――しかし、現実は違った。
王妃様が悪く言っているから何も思わなかったが、彼女もどこか影があるようで美しい。彼女を泣かせてしまってもよいのだろうか。否、そもそも女性を泣かせてはいけない。でも、殺さなかったら王妃様が泣くことに……どうする、僕!?
彼は、某鏡アンケートにおける、永遠の二十歳だっただけである。つまり、女性には親切にすることが染み付いているのだ。
そんな彼が女性を殺せるか? 否、殺せるわけがない。では女性の頼みを断ることは? できるはずがない。
ど、どうかしたのですか?
そんな(自業自得な)葛藤に陥っているとは露知らず、更なる押しのために近づき、見上げる。
あ、え、えっと……
と、そのときだった。極限状態に陥ったシェーンの脳が、(物語の影響で)一つの策を思いつかせたのである。
ヴァイネ様……私は、王妃様にあなたを連れ出すよう頼まれました。
は?
真の母親が殺すよう頼んだとは流石に言い難い。そのため、シェーンは嘘をつくことにした。……真実を知っているヴァイネを混乱させることになるが。
私は、あなたに自由な外の世界を見せるよう頼まれました。……駆け落ちしてください、ヴァイネ様!
あ、言い間違えた。本当は駆け落ちしたと周りに伝わることとなりますだ。うっかり本音が。
あ、はい。
あ、やってしまった。突然すぎてうっかり肯定しちゃった。……駆け落ち!?
で、では粗末ですが私の家に案内いたしましょう。その後、必要な物を買いに行きますのでヴァイネ様はそこで寛いでいてください。
は? え、もしかして許可された? 肯定された? とりあえずヴァイネちゃん家に送ってから豚の心臓でも持っていくことにしよう。
はい……ありがとうございます……!
もうこうなったらやけくそよ。やってやるわよ。……面倒くさいわね、ほんと。
ここです。
まあ、素敵! ここが第二の私の家になるのね。
まさか本当に殺されなかったとわね。……ちゃんと演じきられるかしら。
あっはっはっは。こりゃ傑作だ。
さーて、王妃の所を修正しないと。
ふふふ。しっかり彼のところまで送らないとねー。怒られちゃう。
……まったく。なんで兄さんはこれの面白さをわかってくれないんだろうな。