神 斬
髪 切 り屋

4、六大(ろくだい)一

稲荷の神が、金剛遍照空海と都比売(みやこひめ)神社で別れる少し前
朱右は、犬のコンと一緒に、百五十四町石の横にある
稲荷宗五郎大明神に、旅の無事を祈っていた。

朱右

しかし、ここの、お稲荷さんの社(やしろ)、ある意味すごい、雰囲気あるなぁ

犬のコンは、ワンと吠えて答えてくれているようである。

朱右

思わず、独り言を言ってしまった・・・・犬のコンちゃんは、人間の話がわかるのかなぁ?)

朱右

とりあえず、白狐さんに、言われた目的の一つ目は達成したし、次は六本杉を目指そう

百五十四町石のを後にして、道を進む、朱右の前を犬のコンが先導して歩いていた。

朱右

しかし、六本杉まであと、どれくらい歩くのだろうか?

しばらく歩いていると、六本杉峠と書かれた、立て札を見つける朱右であった。

朱右

立て札があるって、ことはあと少しってことだろう

朝日が昇り、少しづつ、気温があがっていて、山を登る、朱右の体力は確実に、減っていくのである。

朱右

やっぱり、上着のパーカーを、脱ごう、暑くて、たまらない

白狐

ならば、リュックに入っている、お洒落ぇなぁ防寒着を着ればよかろう
 どうせすぐに脱ぎたくなって、リュックに戻すはめになるじゃろうが

麓から登る前に、白狐に言われた、一言が脳裏をかすめて
なんだか、みすかされた気分になったが・・・

朱右

負けた、気分になるが、体力的に、きつくなってきているので、背に腹はかえられない

朱右は、上着のパーカーを脱ぎ、リックに戻した。

上着のパーカーを脱いだ、朱右の見た目は、文字通り、修行している、お坊さんが、でっかいリュックを、背負っているようにしか見えなかった。

朱右は、リックの横に入っている、ペットボトルを取り出し、お茶を飲み、再び歩きだした。

数分経って、朱右は、自分の考えが、浅はかだった事を思い知る

朱右

立て札があるって、ことはあと少しってことだろうと思ったのに
ここから、石の階段が立ちふさがっているとは・・・・

階段の前に立っている町石には、百三十七と書かれていた。

朱右

一町=長さの単位現在の110mぐらいだから、さっきから、2キロ近く歩いているのに
ここから、さらに石の階段が・・・・麓の百八十町石から計算して5キロ近く歩いているのに
まだ六本杉に着かないなんて・・・


犬のコンが心配そうに、こちらを見ている

朱右は、決意を固め、石の階段を、登る、登る、登る、登る、登った、登る時
そして、まだまだ、登る、登った、登っている時、登れば、登れ、登りきる

石段を登り切り
なんとか、六本杉峠に、たどり着いた
犬のこんは、まだまだ、平気なようだ。

六本杉峠には、さらに無常ともいえる立て看板が立っていた
都比売(みやこひめ)神社 ここから、1.3キロメートル

朱右

全部で6キロも歩いて、やっと、目的地かぁ

山登りの6キロは、普通の道を6キロ歩くより、相当時間がかかる
もちろん、体力的にも、相当つらいのであるが・・・・

まだ、朱右は知らない、これが、鍛錬の序章であったことを

さらに、40分ほどかかって、へろへろに、なりながら、都比売(みやこひめ)神社に到着し、一の鳥居をくぐった先の輪橋に、黒い犬をつれた、お坊さんを見つけた朱右は、マラソンを完走したランナーがゴールのテープを切るように、都比売神社の一の鳥居をくぐって、その場に座りこんでしまった。

白犬のコンは、黒犬のゴウに走りよって行った。

朱右も、立ち上がり、黒犬の側で、瞑想している
お坊さんに声をかけた。

朱右

あのぉー、すみません、遍照さんですか?

 空海は、一瞬、少しだけ片目を開けて、朱右を見た

遍照金剛

いかにも、拙僧が遍照ですが

朱右

よかったです、お会いできて
 私の名前は朱右と申します、稲荷要子(いなりようこ)さんから
 遍照さんと、ここで会うように言われた者です。

遍照金剛

なるほど、稲荷神の、言ったとおりじゃ、何たる、縁(えにし)

空海が小さな声でつぶやいた。

朱右

何か、おっしゃいましたか?

遍照金剛

いえ、お気になさらずに
 稲荷神は要子(ようこ)とあなたに呼ばれているのですか?

朱右

遍照さんは、要子さんが、神様と知っているのですね

朱右

要子って名前は、初対面の人とかに、怪しまれないように、私が仮につけた現代名でして

遍照金剛

白狐(びゃっこ)と言う名も、拙僧は知っているので

朱右

そこまで、わかっているのなら、あえて、本名を隠す必要はなかったですね
 白狐さんも、遍照さんの事を古くからの友だと、私に説明していましたし。

遍照金剛

なるほど、そうでしたか

朱右

しかし、遍照さんが、予想していた感じと違って、優しそうなかたでよかったです。
もっと、こう、強そうな人を想像していたもので・・・

空海

予想していたより、華奢(きゃしゃ)でしたかね

朱右

すみません、お気にさわりましたか?

遍照金剛

いえ、大丈夫ですよ。

朱右

よかったです、
話は変わりますが、一つ、遍照さんに、質問してもよろしいでしょうか?

遍照金剛

どうぞ、なんなりと

朱右

遍照さんって、神さまで、白狐さんの親戚か何かですか?すごく白狐さんと雰囲気が似てるので
 身内のかたかと・・・・

遍照金剛

朱右殿は不思議な事を、おっしゃいますなぁ

朱右

すみません、先ほど、一瞬、目を開けたときに、ふと、遍照さんと白狐さんの顔が
そっくりだと思ったものでして、気にさわったら、ごめんなさい

遍照金剛

いえ、気にさわってないですよ、そして、私は僧侶で人間です

遍照金剛

ともあれ、話してる、間に、朱右殿の息も整ったようですし、すこし
 都比売(みやこひめ)神社の境内を歩いて、参拝してみますか、拙僧が
 案内いたしますよ

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参の巻     金剛 4.六大 二に続く

神斬髪切り屋(かみきりや) 参の巻 金剛  4 六大 一

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