僕たちはクレアさんの転移魔法で
リパトの町の出入口にやってきた。
一瞬で移動できるなんて、やっぱり便利だなぁ。
僕たちはクレアさんの転移魔法で
リパトの町の出入口にやってきた。
一瞬で移動できるなんて、やっぱり便利だなぁ。
じゃ、1週間後に迎えに来るわ。
ありがとうございますっ!
お手数をおかけしますっ!
僕はお礼を言って頭を下げた。
するとクレアさんは優しい笑みをこぼし、
その場から瞬時に消えた。
さて、と……。
シーラ、行こうか?
はいっ!
1週間後ってことは、
移動の時間を差し引くと
洞窟には2日くらいしか
滞在する時間がないね。
それでも充分です。
ウェンディ様の
元気な顔が見られるんですから。
そうだね。
僕たちはリパトの町を出発し、
第2の試練の洞窟へ向かって歩き出した。
久しぶりの山道だからちょっと息が上がる。
毎日トレーニングをしてきたんだけどなぁ。
グラドニアに戻ったら
もう少しだけハードにしないといけないかも。
シーラ、少し歩くのが速いよ。
え? そうですか?
ウェンディさんと会えるのが
楽しみなんだね?
はいっ!
でもあまり急ぐと
途中でバテちゃうよ?
配分を考えて歩かないと。
そうですね……。
その後、僕たちは休みを入れながら
山道を歩いていった。
そして町を出てから2日後、
ようやく洞窟とウェンディさんの住む小屋が
見えてくる。
なんだか懐かしいなぁ。
前にここを出発した時と景色は変わってない。
あの時、シーラと出会ったんだよね。
僕もまだ勇者の見習いで、
ミューリエやタックの足を
引っ張ってばかりだったんだよなぁ……。
でも今は魔王を倒しましたって
ウェンディさんに胸を張って報告ができる!
ウェンディ様、戻りましたっ!
あれ? 誰もいない。
出かけてるのかな?
小屋の中には誰もいなかった。
ベッドを見ても、
掛け布団がきれいに畳まれている。
どこかに隠れているってことはないよね?
っ!
シーラは少し狼狽えながら
小屋のあちこちを調べ始めた。
僕もベッドや暖炉の方へ移動してみる。
……おかしいです。
食器類は長く
使われていないみたいですし、
テーブルには埃も積もっています。
うん、布団にも埃が被ってる。
暖炉もきれいに掃除してあって
最近使った様子はないね。
ウェンディ様はどこへ……。
ん?
その時、僕はふと視線を向けた布団の下に
何かがあることに気が付いた。
隙間から何かの紙がはみ出ている。
布団をずらして見てみると、
そこにあったのは一通の手紙だった。
封筒の表には『シーラへ』と書かれている。
シーラ! ちょっと来て!
布団の下にシーラ宛ての手紙が
置いてある!
どこですかっ?
僕は駆け寄ってきたシーラに手紙を渡した。
そして封を開け、一緒に文面を読む。
親愛なるシーラへ。
お前がこの手紙を読んでいる今、
きっと私はこの世にいないだろう。
お前が旅に出たあとに可愛い居候が
ここへやってきて、一緒に過ごしていたんだよ。
サララという子でね、
シーラとよく似て頑張り屋さんで
優しい心の持ち主だった。
ただ、しっかりしているシーラと違って
危なっかしいところがあるからね。
これから見守るために洞窟へ入る。
洞窟には邪悪な魔族がやってきた。
そいつらがデリンという魔族を
解放しようとしているようだ。
シーラよ、
これからもアレス様をお助けするように。
今まで私に
楽しい時間を与えてくれたことに
感謝しているよ。
シーラ、本当にありがとう。
あ……あぁ……。
シーラの目から涙が溢れ、
手紙の上にポタポタと落ちた。
体は小さく震えている。
デリンを結界から解放したのって
確かシャインたちだよね?
彼女たちの性格を考えると、
ウェンディさんはきっと……。
ウェンディ様!
ウェンディさまぁ~っ!
シーラ!
僕が制止させようとした時には
すでにシーラは小屋を
飛び出してしまっていた。
きっと洞窟の中へ向かったんだろう。
――急いで追いかけなきゃ!
次回へ続く!