レインさんと約束をした後、
僕は中庭で洗濯物を干している
シーラのところへ走っていった。
辺りには干されたたくさんの洗濯物が
そよ風になびき、
石けんのいい匂いが漂っている。
その真ん中にシーラの姿を見つけた。
レインさんと約束をした後、
僕は中庭で洗濯物を干している
シーラのところへ走っていった。
辺りには干されたたくさんの洗濯物が
そよ風になびき、
石けんのいい匂いが漂っている。
その真ん中にシーラの姿を見つけた。
シーラ!
アレス様?
どうなさったのですか?
まだ詳しい日時は
分からないんだけど、
数日後くらいに一緒に出かけよう。
どちらへ行くのです?
第2の試練の洞窟!
転移魔法で
移動させてもらえるんだ。
ウェンディさんに会えるよ。
本当ですかっ!?
シーラ、すごく嬉しそうな顔をしてる。
こんなに喜んでいる姿を見るのって
久しぶりかもしれないなぁ。
僕もなんだか嬉しくなってくる。
やっぱりシーラは
ウェンディさんに会いたい気持ちを
今までずっと我慢してきたんだね。
レインさんと約束をしてから数日後、
僕のところへやってきたのはクレアさんだった。
なるほど、
クレアさんなら転移魔法が得意だもんね。
クレアさん、ご無沙汰してます!
久しぶりね、アレス。
レインに頼まれて来たんだけど、
転移魔法で移動したいんですって?
はいっ! お願いしますっ!
で、どこへ行きたいわけ?
ミューリエのところ?
それともトーヤのところ?
あ……どっちも行きたいなぁ……。
いえ、それはまた別の機会に。
今回はリパトの町まで
お願いしたいんです。
もしそれがダメなら
シャポリの港町でも構いません。
リパト? あぁ、あの町ね。
えぇ、大丈夫よ。
私、行ったことがあるから。
良かった!
もしかしたら、
シャポリから歩くことになるかもって
思ってたからちょっと安心した。
リパトから第2の試練の洞窟までなら
無駄な時間を使わなくて済む。
あの、質問があるんですけど、
転移魔法ってなんで
行ったことがない場所には
移動できないんですか?
転移魔法で移動するには、
その場所に対しての
強いイメージが必要になるのよ。
だから行ったことがある場所でも
ずっとご無沙汰な場所だと
失敗することがあるわね。
じゃ、クレアさんはリパトの町へ
つい最近にも行ったんですね?
ま、そういうことね。
でもどうしてアレスは
リパトの町へ行きたいの?
その町の近くに
シーラの故郷があるんです。
連れていってあげたいなぁって。
…………。
僕の話を聞いたクレアさんは、
なぜか表情が曇って黙り込んでしまった。
何か変なことでも言ったかな?
どうしたんですか?
急に黙っちゃって?
遅かれ早かれ
知ることになる……か……。
クレアさんは俯いたまま、
独り言を言うようにボソッと呟いた。
さっきから彼女は態度も言葉も不可解で、
僕にはさっぱり事態が掴めない。
首を傾げていると、
クレアさんは顔を上げて僕を見つめてくる。
……あなたとシーラは
これから大きな岐路に
立たされるかもしれない。
どういうことですか?
ふ……さぁね……。
いつでも誰かが答えを
指し示してくれると思わないで。
…………。
自分の目で見て、肌で感じて、
その場でよく考えることね。
は、はい……。
ただ、アドバイスをするとしたら、
絶対にシーラの手を
離しちゃダメだってこと。
もしその手を離したら、
二度と掴めなくなるかもしれない。
それはどういう――
ふふっ、私としたことが
これは余計なお節介だったわね。
クレアさんは微笑みながらそう言うと、
それっきりこの話題について
何も話さなくなってしまった。
大きな岐路に立たされる……か……。
どういう意味なんだろう?
その言葉がなぜかすごく気になって、
頭から離れないことだけは確かだけど……。
この先、僕の前には何が待っているんだろう?
次回へ続く!