お父さんとお母さんの思い出の品は少ない。
私が知る限りでは
この家そのモノが思い出の品で
写真とか手紙とかは無い。
そう、聞かされていた。
……けど。
なんで……。
なんでお父さんの手紙が
ゴミ箱から……?
死後の手紙
あたしは手紙の続きよりも、
それがゴミ箱から見つかった事に
納得いかなかった。
大切なお父さんの手紙が。
……おねぇちゃんが……捨てたの?
……お父さんの形見の手紙を?
……これを
……あたしに見せたくなかったって事?
……なんで……なんで……
あたしはヘナヘナと力なく床に座り込んでいた。
頭の中をめぐる、
良くない考えの渦巻き。
止めどなく頬を伝う涙。
少しずつ視界の端から暗くなっていくのを感じる。
不意に書斎のドアが開く音に、
あたしは我に返った。
ハッ!!!
こんな夜中に何やってんだい。
……。
……これ……。
あたしは手に持つ封筒を
おねぇちゃんに見せた。
……!
……見たんだ……ね。
コクッ
……全部?
まだ最初のところだけ……。
そう……。
……。
どうして……。
ん?
どうしてこの手紙の事をあたしに隠してたの!?
……隠してたわけじゃない。
封筒をよく見てみな。
……封筒?
おねぇちゃんに言われて
あたしは手に持つ封筒に視線を落とす。
封筒の表には、
うちの住所と宛名にお姉ちゃんと私の名前、
そして100円切手。
封筒の裏には
やっぱりうちの住所と
差出人のお父さんの名前。
……この封筒が
……なんなの?
消印が押してあるだろ。いつの消印だい?
え!?
あたしは切手の上に押してある消印を見る。
20XX年……10月28日って……
一昨日の日付!?
ああ、そうなんだ。
この手紙が届いたのも、一昨日の夕方なんだ。
どういう事……
お父さんじゃない誰かが
お父さんを偽って出したんだろ。
それに何より、アタシ達への手紙なら郵便を使う必要はないだろ?
あ……。
くだらないイタズラさ……。
でも、なんでお父さんの名前で?
うーん……。
それはわからないけど……。
あ、もうこんな時間!
さぁ、寝るよ寝るよ!
あ……。
リツ、明日はちゃんと学校に行くんでしょ?
早く寝ないと。
……うん。
あれが……レムの言う干渉だったの……?
……。
部屋に戻ったあたしは
ベッドに転がりながら
少しだけ読んだ手紙の内容を思い出す。
ユウ、リツ、元気にしているかい?
風邪をひいていないかい?
今はこんなに小さいリツだけど、きっととても大きくなったんだろうね。
まるで遠い過去から、
今の私達に宛てたような文面。
言うなれば、
タイムカプセルに入れる
未来の私達へ宛てたような手紙。
本当にただのイタズラなの?
おねぇちゃん、都合が悪くなると、
いつも時間を言い訳にして逃げるんだよな……。
……文面の続きが気になる。
つづく