どうしてこんなことに!?
もしかして、あたしのせい!?
あたしが何か間違えた?
そう考えだすと、思い当たる節。
流れたおねえちゃんの涙。
今日、あたしと一緒にいなければ
おねえちゃんが涙を流すことは
なかったんじゃ……。
チガウ!
キミ ノ セイ ジャナイヨ!
ワルイノハ
ヤツラ……
『クロヴィス』ダヨ!
レム……。
タシカニ ココロ ガ
ヨワッテイル ヒト ヲ
ネラッテルケド……
ヤツラハ ヒト ノ
カンジョウ ト
カンケイ ナク アラワレル。
ヤツラ ガ フエタ ノハ
カレ ノ アルジ ノ
カナシミ トハ
カンケイ ナイヨ。
…キット……
キョウ ドコカデ
カンショウ サレタンダ。
干渉……?
おねえちゃんとは
ずっと一緒にいたはずだけどなぁ…。
あたしが知らない間の
おねえちゃん事……。
今日、おねえちゃんと離れてたのって……。
朝ごはん食べてる時の書斎……。
ヘルプ前の書斎……。
夜ご飯を作っている時の書斎……。
……書斎?
もしかして、書斎で何かが……。
レム!
あたし、書斎に行ってくる!
だから……
ここをおねがい!
ウン マカセテ!
不意の覚醒
パチッ
心の世界から現実に戻るのに
だいぶ慣れてきたあたし。
以前は境界が曖昧だったけど、
今回はさっきまでの出来事を明確に覚えている。
そして、今やるべきこと……。
行かなきゃ、書斎に。
ベッドから降りてカーディガンを羽織り、
部屋から廊下へ出る。
おねえちゃん、大丈夫かな……。
おねえちゃんの事が気になったあたしは、
起こさないようにおねえちゃんの部屋を
そーっと覗く。
……うぅぅん
眠っているようだけど、
少し苦しそう。
悪い夢でも見ているのかも。
ふと見ると、おねえちゃんのベッドの横には
ティッシュが散らかっている。
おねえちゃん、ティッシュ散らかして……。
……また泣いたのかな。
あたしは胸が締め付けられるような気がした。
書斎に……行こう……。
静かにおねえちゃんの部屋のドアを閉め、
階段を降りる。
書斎の前に来たあたしは
ドアノブに手をかけた。
ぐすん
……。
フラッシュバックするおねえちゃんのすすり泣き。
あたしは思い切ってドアを開けた。
カーテンの隙間から差し込む月明かり。
照らされた書斎は資料や漫画を描く道具など
物は多いけど小ざっぱりとしている。
それゆえ、夜の静寂は
なお一層の不気味さを醸し出す。
うー……、怖くない怖くない……。
入口横のスイッチを入れて電気をつける。
見た目はいつもと変わらない書斎。
……けど……。
なんだろう。
空気が重い。
昼間にヘルプした時は
そんなの感じなかったけど……。
まるで、良くない空気みたいな物が
渦巻いているような感じがする。
換気……してないのかな……。
少し換気をしようと窓を小さく開ける。
ひんやりとした空気が窓から染みこむ。
晩秋の夜の空気はギュッと身を引き締める。
と、その時。
びゅぉぉおおお!
キャッ!
窓から突風が吹き込み、
書斎の書類や原稿、ゴミを巻き上げた。
ひゃぁぁ……サイアクだ―。
原稿のページ順、
間違えないようにしないと……。
原稿を集めて揃え、
デスクの上に戻した時、
デスク横のゴミ箱が視界に入った。
……ん?
ティッシュが舞い上がったゴミ箱の底から現れる
一通の丸められた封筒。
なんだろ、これ。
しわくちゃの封筒を伸ばす。
ペーパーナイフで既に開封されている封筒。
けど、中には手紙も入っている。
封筒から手紙を取り出し目を通す。
………。
……え!?
あたしは読み進めるうちにハッとして、
封筒の裏の差出人を見た。
差出人は
死んだお父さんだった。
つづく