俺たちは、中心管理司令都市に辿り着いた。

 途中で重力制御装置を利用した、何者かの妨害工作に遭ったが、この手口は既に知っている。おそらくあいつだろう。

霧裂 聡史

 やあ、ここまでの長旅ご苦労様。

 それと、優斗は久しぶりだね。凰牙先輩は元気にしてるかい?

 ほら、出てきた。

 こいつは俺の父親の一つ下の後輩。昔から家に来ていたが、俺はこいつがどうも苦手である。

霧裂 聡史

 他のみんなははじめまして……。

 あれ? 希ちゃん!?

 希を見て、霧裂が驚いた。

 どうやら、霧裂は希のことを知っているようだ。

神裂 希

 お久しぶりです。

 希が、平然と答える。

霧裂 聡史

 傷の具合はもう大丈夫なのかい?

神裂 優斗

 傷の具合? どこか怪我をしていたのか?

神裂 希

 うん、たいした怪我じゃないよ。

 優斗のお父さんのところに居たときにお世話になったんだ。

 希は笑顔で言う。

神裂 優斗

 そうか。

 ところで、あんたが何でここに居るんだ?

 少し前まで、親父と一緒に行動していたのに。 

霧裂 聡史

 それはね、凰牙先輩が灰の街の研究に携わっているからだよ。

 ちなみに、先輩はここには居ないよ。今は南極で調査をしているところだよ。

よかったら、テレビ電話繋ぐけど。

神裂 優斗

 いいよ。親父からは定期的に連絡貰ってるし。

神裂 希

 あ、じゃあ、私が話たいです。

 近況報告も兼ねて。

 俺の後ろから身を乗り出して希が言う。

霧裂 聡史

 わかったよ。

 そうだね……今日の夜には時間が空くと思うから、そのときに私の部屋まで来てくれ。

神裂 希

 わかりました。

霧裂 聡史

 それにしても、印象がだいぶ変わったね。

 三年前とはまるで別人じゃないか。

神裂 希

 そうですね。三年前の私は色々とやってましたから。

 あ、そのことは内緒でお願いしますよ? 

 希はさらっと言ったが、三年前の希は何をしていたのか。

 他人の過去にはあまり興味を持たないが、希の過去には俺たちが想像もつかない出来事があったのだろう。

 まあ、本人が聞くなと言っているから聞かないが、正直凄く気になるところだ。

 俺が、そんなことを考えていると、静香が俺の前に出て霧咲を睨んだ。

霧裂 静香

 お久しぶりです。お父様。

霧裂 聡史

 おう、久しぶり。元気にしてたか?

 俺の目の前で起きている衝撃の展開に、俺たちは驚いた。

霧裂 静香

 元気にしてたか?

 よくもそう簡単に悪びれることもなく話せますね!

 いいですか? 直接会うのはこれが初めてですよ?

霧裂 聡史

 ああ、悪かったよ。研究やら、海外での調査やらでテレビ電話でしか話せなかったからね。

 すまない。

神宮寺 瑞希

え? 一度もあったことなかったの?

霧裂 静香

 そうです。この人は私や母に会う日に限って、急用が入ったとかで結局今日まで直接話したことがないんですよ?

霧裂 聡史

 それは悪かったよ。 今度の休暇は絶対大丈夫だから。

霧裂 静香

 いつもそう言って、急用ができる人はどこの誰ですか!?

霧裂 聡史

 わかったよ。 今日の夜に静香も来てくれ。

 色々とはなしたいこともあるだろうからね。

霧裂 静香

 わかりました。では、夕食後に行きます。

霧裂 聡史

 ああ、待ってる。

 最後にキメ顔でそう言った霧裂 聡史は、その腹の立つ顔にイラッときた静香に一発殴られて床に倒れた。

霧裂 聡史

 どうしてあんな暴力を振るう人になってしまったのか……。

 どう考えても、あんたのせいだろ!

 この場に居る全員が心の中でそう突っ込みを入れた。

神宮寺 瑞希

 あの、私たちは何をしたらいいですか?

 依頼内容の詳細は書いてなかったんですけど。

霧裂 聡史

 ああ、一応データは取れたんだ。

 ほら、ここに来る前に何かなかったかい?

 やっぱりだ。重力制御装置の件は、こいつの趣味だったのだ。

榊原 信也

 勘弁してくれよ。操縦するのにどれだけ神経使うと思っているんだよ。

霧裂 聡史

 すまない。でも、君たちなら突破できると思っていたよ。 

 それでだ。

 君たちには、これから、灰の街の深層部の調査をしてもらいたい。

 そのためのテストだったんだ。 

第四十四話:《中心管理司令都市ミスト・グレー1》

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