こんな時でも周りに気を配る桜花
余りにも不器用ながら、絞り出されたやさしさに淳史は肩身の狭さを感じていた
確かに、これは先輩同士の問題。自分には口を出す権利なんてない。でも・・・お節介を焼いたって許されていいのではないだろうか。何より桜花先輩から溢れてる「助けて」のサインを見過ごすことが自分にはできない性分のようだ
桜・・・花・・・?
気持ち悪い・・・
そうですよね、そうです
私、気持ち悪いですよね?
そ、そんなこと
別にいいんです
私が周りにどう思われようと、関係ない・・・です
先輩?
あ、淳史君もいたんだね
・・・ごめんね、変なところみせて
こんな時でも周りに気を配る桜花
余りにも不器用ながら、絞り出されたやさしさに淳史は肩身の狭さを感じていた
確かに、これは先輩同士の問題。自分には口を出す権利なんてない。でも・・・お節介を焼いたって許されていいのではないだろうか。何より桜花先輩から溢れてる「助けて」のサインを見過ごすことが自分にはできない性分のようだ
僕のことは気にしないでください
ただ・・・慧人先輩は少なくとも桜花先輩のことを思っての行動だと思うのですが
・・・そうなの、けいちゃん?
依然と張り詰めた声で問いただす桜花
慧人はその声に表情に・・・何より桜花に対して誠実さを示すように答える
当り前だろ
当たり前?
けいちゃんにとって、私がクラスの子にハブられてるのも・・・それで私に伝言することも当たり前の偽善なんですか?
・・・そうなんですね。当たり前なんですね
・・・なんでそうなるんだよ、大体偽善なんかじゃっ
両者高まる感情に任せて声を荒げる
早口で言葉を並べ捲くし立てるようとする桜花、それに対応し尚且つ端的にまとめ返答する慧人
「夫婦喧嘩」
その言葉しか、淳史の頭に浮かばない
でも・・・偽善じゃなかったら・・・
けいちゃんが私にそこまで良くしてくれる義理が有りませんよね。どうして私にそこまで良くしてくれるのですか?
ほかの女の子でも同じようにするのでしょ・・・それが当たり前だもんね
・・・しないよ
じゃあ、なんで?
まっすぐに向けられた視線
・・・こういう時に思うことではないかもしれないけど、やはり彼女は儚く綺麗だった
そのまっすぐな思いが自分に向けられていれば、今この瞬間にそっと抱き寄せて愛の1つくらい囁いてあげられるのかもしれない
「心配させてごめん」
「それは桜花が特別だからだよ」
「・・・好きだから、当たり前だろ」
なんて、発せられない思いは心の中に押し込めた。だからこそこう言うしかない
だって桜花の恋が気持ち悪いなんて俺は思ってないから
ただ好きな人が同性ってだけだし、それに桜花は女の子だったら誰でもいいって訳じゃないってことも知ってるから・・・
だから、応援したいって思ってる。それだけじゃ足りないかな、俺の行動理由?
先輩
共感覚を持っていなくてもさっきの慧人の話から分かる
確かに嘘偽りのない理由だけど・・・自分の主張を最大まで押し殺している。自己犠牲精神もいいところだと思ってしまう
そう思ってしまうほど・・・この人は本当に、桜花先輩が好きなのだろうな。だからこんなにも・・・自分が擦り切れてしまっても彼女の幸せを願うような人間なのだ
・・・けいちゃん
やっぱり変な人ですね
なんとでも言ってしまえ
とっても変な・・・私の理解者ですね
ちぐはぐな感情ではあった
でも。この彼女の笑顔が見れるのなら・・・自分の選択は正しかったとそう思いたい
ってか、そう思わないと俺の心が折れそう。いや絶対折れる
ねえねえ、君たちが私の大切な桜花をいじめてるって聞いたけど・・・本当?
冷酷な笑顔を浮かべ、桜花・慧人のいない二年生の教室に雫の声掛けは冷ややかに響くのであった