僕は見てしまった。





昨日の公園に昨日と同じ時間で昨日と同じブランコに昨日と同じ彼女がいるのを。





流石に迷ったが、僕は彼女の所に行くことにした。





だって、まだお礼を言ってもらってないから。

よう

また君なのね。今度はなに?

まだ、昼間のお礼を言ってもらってないのだが? 君たちが汚した物を綺麗にしたのは僕ですよ?

彼女は、深くため息をついたのち、僕の目をしっかりと見て言った。

ありがとう

高校に入って、初めて「ありがとう」と言われた。





なんか、悪くない気分だ

お前はさ、何であいつらに歯向かわないんだ?

ずっと前から気になっていた質問が、突然僕の口から飛び出した。

だって…

彼女は深い深呼吸をして、僕に答えた。

歯向かったり、不登校になるのは、私の負けだから…。

負けってなんだよ?

そんな辛い思いをして、勝ちとか負けとかあるのかよ。どうでもいいだろ、そんなの。

つまり、そんな事をしない限り、まだ私は彼女達と仲良しに戻れる機会が来るかもしれない。私はそう思うの

そんな事…ありえるわけないだろ…

え…

徐々に、頭に血が上って行くのを感じ始めた。





だが、止めようとしても遅かった。

人間関係って言うのはな、お前が考えている以上にすぐに壊れて、そのくせ修復がきかねーんだよ! お前の考えている様に甘くはないんだよ!

だから僕は、友達を作らない。





だから僕は、一人を好む。





だから僕は…いつも悲しかった。
 




毎日の日常には、羨ましいと思うことや、妬ましいと思う事が沢山あった。





学校でいつもうるさくしたり、喧嘩をしたり、仲直りをしたり。





僕はその全てを心のどこかで望んでいた。





だけど、裏切られるかもしれない。喧嘩をして仲直りができないかもしれない。いじめられるかもしれない。





この全てが怖くて避けて来た。





現に、僕の目の前には被害者がいるじゃないか。





やっぱり、僕は正しいんだ。

確かに、そうかもしれない

彼女の目は、僕の瞳を強く見つめて言って来た。

それでも、私は諦めない。きっと、また仲良くできるのを私は信じてる

だから、無理なんだよ! 僕の様に、君もボッチをやってみてわかっただろ? 一人でいる事がどれほど楽なのか!

君のボッチは、ただ怖くて逃げてるだけだよ!

僕は、ずっと逃げて来た。確かに、彼女の言うとおりだ。




でも…

僕は逃げて来た! それの何が悪い!

別に悪くはないよ。でも、君の理想を私に押し付けないでよ!

パチンっと言う鈍い音が、公園中に広がった。





その音と同時に、少女は公園を走って後にした。





僕は公園で一人、立ち尽くす事しかできなかった。
 




彼女の残した言葉が、僕の頭から離れる事はなかった。





そんな彼女だったが、結局高校を卒業するまで、いじめが止むことは無かった。





僕は、正しかったのかな?

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