静かだ。


ついさっきまで騒がしかったのに、今はすっかり静かだ。

肌にあたってるのは、とっても柔らかくてふかふかの感触。
あのどこまでも冷たい感触とは正反対だ。





おかげで、意識を失ってたみたいだ。

……まだ起きてないみたいだな

単にお寝坊さんなだけならいいんだがな。なんか、起きるのが怖いみたいに見える

んなわけねえだろ、グルー。どこに起きるのが怖い子供がいるんだよ

お前は食うのも寝るのも好きだからな。だが、皆がそうってわけじゃないさ。何かあったんだろうな

……俺たち、何かしてあげられねえかな

今は無理さ。まずはこの子が目を開けないとな

さっきの声と同じ声だ。

声は怖い感じはしないが、やっぱりあの眼と同じだろうか。
私を好奇の目で見て、怖がらせるのだろうか。
そして、悲鳴をあげた私を不気味に感じて捨てていくのだろうか。


そんなの、もう嫌だった。

え………?

ん?おい……

泣いてる……?

何これ?
どうして目から水が出るの?

慌てて抑えようとしても、止まらずに水がどんどんあふれ出してしまって。


パニックになっていく。
体が震え出して
自分じゃどうしようもなくなっていって
自分の体が破裂しそうになって

思わず体を抱きしめる。


しかし、震えも涙も止まってはくれない。

大丈夫か?

すぐ近くに気配を感じた。

そして、頭に新しい感触。


誰かが、私の頭を撫でてくれている。

不器用で少し乱暴だけど、優しい動かし方だった。

うっ………

目を開けてみようか。

けど、もし撫でてくれてる眼が怖かったら?


それはとっても怖いけど、けど、見てみたいと思った。

この眼は、どんなふうに私を見ているのだろう。

………………

トロー

…………

最初に視界に入った眼は、とても驚いていた。


私と視線を合わせながら、固まっている。

その目に好奇の色はなく、そして――――

トロー

グルー!!起きたぞ!!この子起きたぞ!!

グルー

ああ、見えてるよ。宿の人に飲み物と薬もらってくるから、お前ちゃんと見てろよ

トロー

おお!!

私をここにつれてきてくれたのは、この二人組の男の人のようだった。

グル?と呼ばれた人は私を見て少しだけ笑うと、部屋から出て行った。

トロー

怖かったんだな。でも、もう大丈夫だからな

そう言って、また私の頭を撫でてくれる。

不器用だけど、それが心地よくて温かかった。

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