私の産声は、何とも言えない悲鳴だった。
痛いわけでもないのに、初めての光に驚いたわけでもない。


ただ、それよりも怖いものが目の前にあったんだ。



私を好奇の目で見下ろす、沢山の眼が。



その瞬間に、私は本能的に悲鳴をあげてしまった。

眼は、すぐに私を捨てた。




生まれてすぐに奇声をあげるなんて、なんて不気味な子。
バンシーか何かじゃないの?
化け物が人間の腹から生まれてくるなんて、どこまでも傲慢な。

そこで、恥をさらして死んでしまえ。

………………

声なんて出なかった。
あの時の悲鳴が、私の最初で最後の声だったかもしれない。

私は、助けてほしくて悲鳴をあげたのに、そのせいで捨てられてしまった。


怖い


怖い


怖い




こんな世界に、生まれて来たくなかった。

このまま何もしなければ、自然と消滅することができるのかな?

枯葉のように、地面の栄養になれるのなら、きっとそれが私が生まれた意味なんだと思うから。


そう考える方が、心がずっと楽だったから。



私はずっと目を閉じていた。

おい!大丈夫か!?

誰だろう。
知らない、低い男の声だ。

……全然脈がねぇ。おいグルー、ちょっと来てくれ!!

どうした?トロー

子供が倒れてるんだ!食べ物何か持ってないか!?

……本当だ。だったらトロー、とりあえず上着でこの子をくるめ。今から急いで宿まで戻るぞ

ああ!!

何かが、私の肌に触れた。
それとほぼ同時に、体がふわりと浮かぶのを感じる。


全く理解ができずに、頭の中がパニックになる。
それでも、怖くて目を開けられなかった。

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