4月も半ば。


そろそろ仲良しグループも決まり、勉強のスピードについていけなくて悲しい気持ちになり、部活動も仮入部期間が終わったり、終わらなかったり、入部したり、見学したり学級の委員会が決まったり、そんな激動の時期が少し終わりが見えてきた。

そんな時期。

あたしはというと、いつもの5人(クラスは違うけど泰明含め)に牧が加わったグループが出来ていた。


悠美のグループとは、つかづはなれず、みたいな微妙の距離。

最初に声をかけてくれた友人のいるグループ。

みたいな距離感を保っていた。



混合グループってレアらしく、結構クラスでは目立っている。

あたしも混合グループ夢だった。


小学校からずっと同じグループだったし、女の子の友達が意外と少ないし、うちの高校には、同じ中学の女子はいないから新鮮。

そういえば、なんで絢香委員長になんなかったの?

絢香

えー?
だって、前に悠美がやりたいって言ってたし、私、副委員長しかやりたくない

副委員長は黒田くんやりたがったし?

絢香

そうそう。
こんなのやりたい人がやるほうがいいよ

拓也

絢香そういうとこあるよね。
やればいいのに

絢香

それ言うなら、拓也はなんで体育委員会やんなかったの?
やりそうなのに

拓也

僕、大学上のとこ目指すから、なるべく勉強の支障出したくない

千裕

だからって、俺に押し付けることねーだろ


 

適任じゃない。
うるさいし


 

千裕

全国の体育委員の人に謝れよ!
別にうるさいやつ=体育委員じゃねーよ!


 

えー?なんとなくない?
文化委員には真面目な子、図書委員はおとなしめとか


 

ああ、確かにあるかも。
それ考えたら絢香はなんで美化委員?

絢香

えー、だって校内清掃とか楽しそうじゃん

委員会の話で盛り上がる昼休み。

そんな時、スマホが鳴った。

千裕

絢香―、携帯ブイブイしてるー

絢香

見たらわかるって

絢香

悠美からだ。
ちょっと行ってくる

千裕

どこー?

絢香

うーん。
内緒の話だって

気をつけてねー

絢香

はーい

悠美に呼び出されたのは、使用されてない教室だった。

うちの学校では学習室って呼ばれている。


一応、進学校でもあるうちの高校は、昼休み喧騒から逃れて勉強できる教室が何箇所か設置されている。

文化祭とかの時には、倉庫になってる。


いつもはそれなりに人がいるのだが、今日は人がいないようで、先に来ていた悠美が窓の近くに立っているのがドアの外から見えた。


悠美があたしに改まって話ってなんなんだろう。

不審には思ったけど、あまり何も考えず教室の中に入った。


ドアを開ける音が聞こえているはずなのに、悠美はこっちを見ない。

絢香

悠美?

あたしが声をかけると、悠美がハッとしたようにこっちを見た。

何か考え事でもしてたのかしら。

絢香

話って何?

教室のドアを閉めて中に入ると、悠美が窓際から少し離れて、困ったように笑った。

悠美

絢香ちゃん、もうちょっと近くに来てくれるぅ?

絢香

どうしたのよ

少し近づくと悠美はあたしに止まるように言う。

悠美

あ、ストップ!
そのへんで止まってねぇ

絢香

はぁ?もう、なんなの?
悠美ヘンだよ?

悠美

変じゃないよぉ。
ちょっと、緊張してるけど

絢香

どういうこと?


 

悠美

絢香ちゃんさ、今のところ女子ダントツって聞いたぁ?


 

絢香

何の話?


 

悠美

あ、やっぱりあんまり気にしてないのかなぁ?


 

絢香

……序列の話?


 

悠美

うん


 

絢香

聞いたけど、悠美も高いじゃない


 

悠美

でもね、悠美、このままだと5位内に入れそうにないんだぁ


 

絢香

……10位以内ならすごいことだよ?


 

悠美

そうだね。
でも、もし、何かあったら5位内じゃないと何も出来ない


 

絢香

高校だし、そんなに心配しなくても、大丈夫じゃない?


 

悠美

それは、上にいる絢香ちゃんだから言えること、じゃないかなぁ?


 

絢香

でも私、もしそんな何かが起こったらちゃんと止めるよ?


 

悠美

あー、もう。
わかってないなぁ。
絢香ちゃんはぁ


 

絢香

……何が?


 

悠美

悠美が、ならなきゃいけないのぉ。
女子の一番にぃ

そう言うと、悠美は突然、しゃがみ込んだ。

絢香

え?大丈夫?

駆け寄ろうとするあたし。

顔を上げて、悠美が笑う。

意味を測りかねて、足が一歩前に出た状態で止まった。

悠美

あーあ、そこで止まってって言ったのにぃ


 

絢香

え?


 

悠美

言うこと聞かなかったのぉ……

悠美

絢香ちゃん、だからね?

 
悠美が大きく息を吸い込んだ。

自分の手を頬に持っていく。

やばい。踵を返す。

視界に入るドアには、人影が。

タイミングを図られた。

悠美

きゃああああああああああああああ!

 教室のドアが開く。

紫穂

なに、してるの?

4時間目:平凡な日常の終わり

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