食え。オラを食え

何言ってるの?
どうしてオラを殺さねえの?

それが父ちゃんの役目でしょう?








ハンターは地面に転がっている
キツネの尻尾を拾ってこう呟いた。





オラは村を襲ったキツネを仕留めた証しとして尻尾を持って帰る。

ただし〝人間だった”お前はキツネにもう食い殺さっちぇた事にしてな。

そんでついでにオラもキツネに肩を食いちぎらっちぇ、二度と鉄砲さ持たんねえから猟師さ引退するって事でどうだべ?

そったら面倒な事して父ちゃんの何になんの?

そりゃあ…バカおら。

お前とずっと一緒にいるためだべよ?

…父ちゃん

















































女狐はハンターの肩口を
愛撫するように齧った。




真っ赤な血は
雪にも涙にもなって
彼の傷口に吸い込まれて消えていく。




女狐はその穴
をほじくるように嘗め回し、
ハンターは悶え喘いだ。



つまるところ、








ハンターは身ごもった女を
抱いたのだった。





撃ち殺せん分、打ち抜いちゃるけえ。
これからいっつもは出来なくなっからな。

父ちゃんのバカ

ひと月、経ったらやや子さ産んだお前を迎えに来る。

そんで三人で村を、この山を出て、違う土地で暮らすべ。

そったら幸せじゃねえか?

そったら暮らし…オレにできっかな?

出来るも何も!
お前はおっかさんになるんだからな。

おっかさんに・・・なる。キツネのオレが

そんじゃまたな






そう言い残してハンターは
彼女に口づけしてから、

下山して村へと向かった。
























そして壱か月後、






















また洞窟に戻ると
木の葉のベッドに包まれた


2人の赤ん坊と置手紙があった。




なしてこげんな事なったと?

“オレはおっかあになれません。
そして父ちゃんや村を襲う事もしたくないです。
遠く暗い森の奥に隠遁します。
大好きでした。さようなら”

続く

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