【38】
逃げるとすれば窓だろう。
窓を見ると都合よく鍵がない。
よし!
こんなところで
ワタアメの嫁になどなっている暇はない。
ボクは窓枠に足をかけた。
逃亡?
へ?
声のするほうをおそるおそる見ると
人買い!!
帽子の男がいた。
こんなこったろうと思った
な、なんて言ったって無駄なんだから!
ボクはね、まだやることがあるし!
顔も知らないワタアメのお嫁さんとかありえないし!
ワタアメ?
そ、それにね! ボクは、えっと、
男だし!
……
二番煎じは面白くないぞー
へ?
二番煎じ?
お前が逃げたいのは町に持ち帰る菓子を探してる途中だからだろ?
それが見つかったら断る理由もなくなるな
……ちょっと待て
この人はあのホストクラブにいたんだ。
ボクの旅の目的も知ってる。
だが!
だからと言って目的を果たしたら
雲のお嫁さんになってOKよw
とは一言も言ってない!!
ボクにだって好みというものがある。
結婚は墓場だとか聞くけど、
一応まだ夢と希望も持っている。
それを、
ここの名物はワタアメだ。
行くか
行くって?
あと、俺の名前はネリーだ
人買い……いや、ネリーは
言いたいことだけ言うと
ボクの手を掴んで
屋根から飛び降りた。
……ここは?
飴屋
いや、そうじゃなくってね
何故ボクは人買いと
飴屋などにいるのだろう。
なんで? 王子とかいいの?
俺関係ないし
そりゃあ人買いなら
謝礼貰えば、売った後の商品が
逃げようがどうしようが
関係ないだろうけど。
でも
それでいいのか!?
このへんとかいいか
わからない。
こいつがなに考えてるのか。
ボクがそうやって悩んでいる間に
ネリーは数十粒の飴玉を
買い求めていた。
飴なんかどうするの?
知らねぇの? ここのワタアメは飴玉から作るって
ボクは色とりどりの飴玉を見る。
そりゃあ、これで作ったら
綺麗なワタアメができそうだけど。
ま、一見にしかず
1、2、
3!
!!
驚いた。
ここじゃ機械とか無しで
ワタアメが作れるのか。
今の今まで飴玉だったのに
こんな一瞬で……
食ってみる?
う、うん
わからない。
こいつがなにを考えているのか。
でも
美味しい!
ワタアメは、甘い。
そうだろ?
このワタアメを持って行ったら
みんな喜びそうだ。
だって空の国のワタアメなんて
星くず山でも見たことがない。
そうだ。
町に持って帰らせてくれるなら
帰って来なければいい。
ネリーも王子との縁談云々は
どうでもよさそうだし
このまま……
ボクの意識が町に戻りかけた時
ネリーが立ち上がった。
じゃ、行くか
違う。
ネリーは最初っから
雲の仲間でしかない。
ワタアメは「これで妥協しとけ」
という意思表示。
町に戻らせてくれたとしても
きっと監視付きで
ハロウィンが終わったら
また無理矢理連れて来られるんだ。
鳥の人が乗った馬車を
爆破した時みたいに脅されて。