どうぞ
失礼いたします
ブッ!!!?
………なにか?
ああ、なんでもない。ちょっと予想してた来客と違っただけだから
その来客は、クリエのこと?
「様」が抜けてるよ、メイドさん
いいのよ。ここはお屋敷じゃないんだし
それに、こっちから出向かないと会おうとしないでしょう
……もしかして、あの人も来てるの?
来ていないわよ。今はクリエの傍についてるから
………姉さんに何かあったの?
今朝、血だらけのクリエが運ばれてきたのよ。全身真っ黒の女性に担がれて
血だらけって………
あの娘ったら、気絶してても宝石だけは手放そうとしなかったのよ。なんとかもぎ取ることはできたんだけど
………姉さんらしいな
というわけで、今日は私が宝石の鑑定に伺ったのよ
なるほどね。じゃあ、宝石出して
ふーん、見事なブルーサファイアだね
サファイアって、青いのが普通なんじゃないの?
何故かサファイア=青色って考え持ってる人多いけど、実は大間違いだよ。コランダムって知ってる?
こらんだむ?聞いたことないわ、そんな宝石
コランダムは宝石じゃないよ。鉱石。そのコランダムに色がついたものが、サファイアやルビーって呼ばれる宝石になるの
そして、そのコランダムの中で赤色をしたものだけがルビーって呼ばれてる
え?じゃあサファイアって………
お察しの通り。極論赤色以外のコランダムはすべてサファイアだと思ってくれていいよ。ホワイトサファイアとかイエローサファイアとか、サファイアってめちゃくちゃ種類多いから
本当は更にスターサファイアとかもあるんだけど、既に頭がショート寸前みたいだから黙ってよう
で、サファイアの質を見る前に、まずは加工宝石か純性宝石か見極めないと
すごい……鑑定士みたいね
れっきとした鑑定士だよ。宝石オタクみたいに見ないでよね
じゃあ、失礼して………
帯は見えるし、インクルーションも微量……。さて
……………
……あの、そういう残念なものを見るみたいな視線やめてくれない?これも立派な鑑定方法だからね?
そうなの?
純性は元々鉱物だから冷感があるんだよ。それを確かめるために唇で触れるのは鑑定としてはメジャーなの!
悪かったから、そんな怒らないで
さて、結果から言わせてもらいますが
………うん
純性宝石です
本当に!?
鑑定士の言うこと信じられなきゃ……
プライド高いのは変わらないわね……
まぁ、さすが大貴族のプルートシュタイン家の家宝だけあるよ。S-6だと思うけど
S-6って何?
Sはダイヤモンドの4Cとほとんど同じで、サファイアの価値を決める大事な要素「美しさ」の評価だよ。彩度や色のムラ、透明度、蛍光性といった8つの審査項目を基準にS~Dの5段階で評価をつけるんだ
で、6っていうのはサファイアの色の濃淡を図る指数。1~7まであるんだけど、一番良質と言われてるのは5~6なんだ
えっ?7が一番なんじゃないの?
初めて聞いたらそう思うだろうね。けど、7だと逆に色が濃すぎるんだ。で、1や2だと色が淡すぎるし、1とかほぼ透明だし。適度に色が深い5や6が最も良質とされているんだ
じゃあ、このサファイアは相当に価値があるものなのね?
うん。俺が保証する
……よかった
とりあえず、これは俺が預かるよ。ほとぼりが冷めるまで売りに出せないし、鑑定書とか書かないといけないし
…………
………なに?
……ちゃんと鑑定士やってるのね、アスター
し、しみじみ言わないでよっ
ねえ、これから屋敷に来ない?
………マジで言ってる?
あら、倒れたお姉さんの様子が気にならないの?
…………行きます
素直でよろしい♪