その男を締め上げる人の顔。それを見てその男は悲鳴を上げていた。
「貴様か。あの子供によくも乱暴してくれたな。どういうつもりだ。答えろ」
その男を締め上げる人の顔。それを見てその男は悲鳴を上げていた。
「白状した、だと…」
「はい」
「なんでまた」
「それが…よくわからないんですよね、そうそう艦長もあのリース教授のご子息も、今では地上部隊の指揮官ですが、その御方もおかしなことを言うんですよ」
「おかしなこと、ね」
「連絡取りますか」
「いや。でも地上の指揮官は白薔薇亭の…」
「ああ、それが政府からの要請の旗艦艦隊出動を受けてそちらで出ています」
「胡散臭いな」
「ですから、わざと幹部抜きなんですよ、艦長代理はあのオーナーが。補助にアルデモード大佐が着いてます」
「そんな命令聞いた覚えがない」
「それが、ですね…みんな殿下から直々に下った命令と主張しています」
「殿下が…やっと意志疎通が図れる状態で、そんな細かな指令出せる状態ではないはず」
「なんなんだ…」
「トマスのところはやめとこっと。あいつ、ビビリだし」
「殿下、何かおっしゃいましたか」
「いや」
「なにしてらっしゃるんです」
「なんでもないよ、リッチーくん」
「行った覚えのない場所に行ったなんて言ったらどう思うかな…」
「言ったらビビリますか、殿下」
「何かな」
「霊力というか霊能力あるんですね、殿下って。意志あちこちに飛ばしまくるなんて、強いですねー」
「う、そ…」
「僕も夢で命じられたんですけどね」
「じゃ、君、ほんとに地上部隊の指揮を取っているんだ」
「はい」
「う、そ…トマスのところは、そのね」
「行かないほーが利口ですよ、あの御方、累ガ淵と四谷怪談でぶっ倒れましたもん、源氏物語なら大丈夫かと思ったら、元皇太子妃の生霊の話したら硬直しちゃったし」
「だよね…」
「殿下は…その」
「自分がしたらしいとなれば、そうそうビビってもいられない」
「もうすぐご自身のナマの声で喋れるようになりますよ」
「そうか、でも床離れは」
「無理ですね」
「やっぱりな」
「それから」
「ウォルターさんのことは決めた」
「それも本人聞いてるみたいです」
「慰問団あるだろ、宇宙軍に」
「はい」
「そこのスカウトに依頼を」
「なんて」
「ギルバートくんを入団させるように」
「わかりました、手配しておきます」
「含みのある笑顔浮かべるなよ」
「無理ですよ」
「そりゃそうだな」