夢を見たとラヴェルも言う。
夢を見たとラヴェルも言う。
「どんな夢、フランシー」
「殿下の夢ですよ」
「どうして…」
「よくわかりませんがね、私にいつものように命令をするんです」
「いつものように…」
「この一件の調査の進展と旗艦艦隊の動きを報告するように、といつもの総裁の机に座して言うんですよ」
「それで…」
「朝、起きて殿下の言われたこと、書き出してみました」
「フランシー」
「重症患者ですからね、いつもの勤務は無理です」
「うん…」
「ですが、ご命令は確かなものでした」
「フランシー、ある人の話、聞いてくれる」
「はい」
ウォルターが入室してきた。
「この御方ですか」
「お願いします、ウォルターさん」
「はい」
「聞いてくれる、フランシー」
「私の場合は、スカウトなんです」
「は」
「宇宙軍に来ないかと口説かれまして」
「宇宙軍に、ですか」
「はい。あの暗殺未遂現場での私の動きが気に入ったと言うのです」
「殿下は意識がなかったはず」
「そうなんだけど…」
「陛下」
「不思議なんだけど、見ていたみたいなんだよね…ギルバートくんの負傷についても」
「何か」
「それは私が」
「子供に怪我をさせた卑怯者など何故、君は殺さなかったと責めました、私を」
「なんて答えたの、夢の中でしょ」
「背景があるに違いない、ここで暗殺者を倒しても同じ暗殺者が来るはずだ、と」
「それで納得した様子だったわけ」
「それを聞いた途端、宇宙軍に来ないか、でしたよ」
「ありゃ」
「三晩続けて出てきて、宇宙軍に来ないか、と」
「それはまた」
「来る気がないのなら、考えがある、とそう言ってましたけれど」
「あっそう…他にも夢見た人、いそうだね」
「リースさんは見なかったのですか」
「ううん、見ましたよ、地上の指揮系統は君に託す。姉君と連携を取って行動してくれ、と」
「は」
「命令受けたってわけ。今のところ、宇宙軍の母星地上部隊の指揮官は僕ってわけ。実質の指揮はフランシーがするけど」
「大丈夫なのですか」
「なんとかね、前歴知っているでしょ、僕の」
「確かに。国王でしたね、あなたは」
「あとは…なんで吐きそうもなかった犯人がああも率直に白状したか、なんだよね」
「確かに。あの手の人間は薬を使っても無駄のはずですし」
「それも夢らしい…」
「夢、ですか」
「ウォルターさん、助かりました、またのちほど、今度はプライベートでお会いしましょう、ギルバートくんと遊びたいし」
「陛下」
「いいじゃーん。殿下がアレじゃ、あのゲーム出来ないんだもん」
「まったく…」
「歳相応のこと、聞きますと安心しますよ、では」
ウォルターが帰っていく。