夢を見たとラヴェルも言う。

リチャード・リース

「どんな夢、フランシー」

ラヴェル艦長

「殿下の夢ですよ」

リチャード・リース

「どうして…」

ラヴェル艦長

「よくわかりませんがね、私にいつものように命令をするんです」

リチャード・リース

「いつものように…」

ラヴェル艦長

「この一件の調査の進展と旗艦艦隊の動きを報告するように、といつもの総裁の机に座して言うんですよ」

リチャード・リース

「それで…」

ラヴェル艦長

「朝、起きて殿下の言われたこと、書き出してみました」

リチャード・リース

「フランシー」

ラヴェル艦長

「重症患者ですからね、いつもの勤務は無理です」

リチャード・リース

「うん…」

ラヴェル艦長

「ですが、ご命令は確かなものでした」

リチャード・リース

「フランシー、ある人の話、聞いてくれる」

ラヴェル艦長

「はい」

ウォルターが入室してきた。

ラヴェル艦長

「この御方ですか」

リチャード・リース

「お願いします、ウォルターさん」

ウォルター

「はい」

リチャード・リース

「聞いてくれる、フランシー」

ウォルター

「私の場合は、スカウトなんです」

ラヴェル艦長

「は」

ウォルター

「宇宙軍に来ないかと口説かれまして」

ラヴェル艦長

「宇宙軍に、ですか」

ウォルター

「はい。あの暗殺未遂現場での私の動きが気に入ったと言うのです」

ラヴェル艦長

「殿下は意識がなかったはず」

リチャード・リース

「そうなんだけど…」

ラヴェル艦長

「陛下」

リチャード・リース

「不思議なんだけど、見ていたみたいなんだよね…ギルバートくんの負傷についても」

ラヴェル艦長

「何か」

ウォルター

「それは私が」

ウォルター

「子供に怪我をさせた卑怯者など何故、君は殺さなかったと責めました、私を」

リチャード・リース

「なんて答えたの、夢の中でしょ」

ウォルター

「背景があるに違いない、ここで暗殺者を倒しても同じ暗殺者が来るはずだ、と」

リチャード・リース

「それで納得した様子だったわけ」

ウォルター

「それを聞いた途端、宇宙軍に来ないか、でしたよ」

リチャード・リース

「ありゃ」

ウォルター

「三晩続けて出てきて、宇宙軍に来ないか、と」

ラヴェル艦長

「それはまた」

ウォルター

「来る気がないのなら、考えがある、とそう言ってましたけれど」

リチャード・リース

「あっそう…他にも夢見た人、いそうだね」

ウォルター

「リースさんは見なかったのですか」

リチャード・リース

「ううん、見ましたよ、地上の指揮系統は君に託す。姉君と連携を取って行動してくれ、と」

ウォルター

「は」

リチャード・リース

「命令受けたってわけ。今のところ、宇宙軍の母星地上部隊の指揮官は僕ってわけ。実質の指揮はフランシーがするけど」

ウォルター

「大丈夫なのですか」

リチャード・リース

「なんとかね、前歴知っているでしょ、僕の」

ウォルター

「確かに。国王でしたね、あなたは」

リチャード・リース

「あとは…なんで吐きそうもなかった犯人がああも率直に白状したか、なんだよね」

ウォルター

「確かに。あの手の人間は薬を使っても無駄のはずですし」

ラヴェル艦長

「それも夢らしい…」

ウォルター

「夢、ですか」

リチャード・リース

「ウォルターさん、助かりました、またのちほど、今度はプライベートでお会いしましょう、ギルバートくんと遊びたいし」

ラヴェル艦長

「陛下」

リチャード・リース

「いいじゃーん。殿下がアレじゃ、あのゲーム出来ないんだもん」

ラヴェル艦長

「まったく…」

ウォルター

「歳相応のこと、聞きますと安心しますよ、では」

ウォルターが帰っていく。

pagetop