ウォルター

「やられた…」

ギルバート

「どうかしたの、ウォルター」

ウォルター

「宇宙軍の慰問団の入団試験…」

ギルバート

「受けたよ、あそこ、給料いいし。株とか先物取引とかやるよりいいし」

ウォルター

「受かってますよ」

ギルバート

「うそっ、あそこ、よほどのことじゃ…あ」

ウォルター

「そういうことですね」

ギルバート

「で、ああ、来ている、通知、慰問団の護衛官としてウォルターにも就職案内」

ウォルター

「流石としか言いようかない…出かけてきます」

ギルバート

「俺も行く、どうせ、リースさんとこだろ」

ウォルター

「はい」

リチャード・リース

「その立案者なら殿下だよ、二人共ほしいって言ってたから」

ウォルター

「それで、総裁殿に面会は」

リチャード・リース

「今、治療中、やっと生身の肺と心臓に戻せるところだから」

ギルバート

「生身」

リチャード・リース

「今まで機械だったの、培養か終わって移植手術中。一週間くらいはカプセル入かな」

ウォルター

「そうでしたね、脳さえ無事なら生命維持は図れる」

リチャード・リース

「不満、不服かな、やっぱり」

ウォルター

「二度と殺伐とした世界にギルバート様を置きたくないだけです」

リチャード・リース

「それは心配ないよ、慰問団は前線に出るにはいろんな許可がいるので、戦場に赴くことはまずない。ただの芸術家の集まりで…」

ウォルター

「本当ですか」

リチャード・リース

「アカデミーの方で手が回らないアーティストを殿下とトマス殿がポケットマネーで雇っているのが、宇宙軍の慰問団だから」

ギルバート

「ポケットマネー…」

リチャード・リース

「ちょっと手広げすぎて予算が下りることになったらしいけど」

ウォルター

「ちょっと、ですか」

リチャード・リース

「トマス殿、殿下の副官ね、あの御方の趣味、音楽観賞なの。殿下は絵画彫刻とかそちらの方に興味あるらしいし」

ギルバート

「音楽…」

リチャード・リース

「聖歌隊の歴史を調べると必ず名前出てくる人だけど…知らなかったの」

ウォルター

「11代目のウォリック伯爵…」

ギルバート

「あ。市民合唱団の」

リチャード・リース

「そう、嫌なら断ってもなにも起こらないけど」

ギルバート

「宇宙軍慰問団の合唱団って狭き門って知っていたの、リースさんは」

リチャード・リース

「テストはきついって聞いてるよ」

ギルバート

「かなりエリートの合唱団だもの、俺、入りたい」

ウォルター

「なら、私は何も言うことはありません」

リチャード・リース

「よろしく。僕は予備役で、殿下が復帰したら解任だけどね」

ウォルター

「地上指揮官は別にいる・・・」

リチャード・リース

「彼なら、旗艦艦隊にいるよ、もうすぐ戻ってくる」

ウォルター

「ただ…あの暗殺未遂犯については…どうなのですか」

ギルバート

「決定してないんだね」

リチャード・リース

「決定してから連絡しますから、慰問団の件はその後で。それまで自宅待機してください。護衛は手配してありますから」

ウォルター

「わかりました、仕方ありません」

リチャード・リース

「殿下は黒幕の政府高官、できれば」

ウォルター

「何ですか」

リチャード・リース

「消して欲しいらしいけど…情報部がやるかな」

ウォルター

「病死にみせかけるおつもりですか」

リチャード・リース

「できればね、フィッツジェラルドのような真似はしたくないし、今回は内密にことを済ませたい」

ウォルター

「いいでしょう、ギルバート様をしばらく預かってください。私がやります」

リチャード・リース

「汚れ仕事を第一号にする必要は」

ウォルター

「いえ、私なりの決着です。私が守るべき御方に怪我をさせたのですからその代償は払っていただきますよ」

リチャード・リース

「引く気はないと」

ウォルター

「もちろん」

リチャード・リース

「では、お願いします」

リチャードは政府高官の写真を渡した。

ウォルター

「一週間以内にカタつけてきます。それまでは」

ギルバート

「ウォルター」

リチャード・リース

「すこいガードだね、無理だよ、君を殴った暗殺者の元締めだもの」

ギルバート

「でも」

リチャード・リース

「彼一人片付ければすむ、家族に類が及ばないようにするには最善の策」

ギルバート

「妻帯者なの、リースさん」

リチャード・リース

「妻子がいるんですよ、テロリストと判明すれば余計な疑いかけられて不自由な思いを家族がします」

ギルバート

「そう…」

リチャード・リース

「あなたも名家の出身ならわかってらっしやるはずです、ギルバートさん」

ギルバート

「はい」

リチャード・リース

「ウォルターさんはあなたを守れなかったと思ってるんです」

ギルバート

「え」

リチャード・リース

「そのストレスは発散していただかないと」

ウォルター

「国王って食えませんね」

リチャード・リース

「うふ、シェークスピアの期待には沿わなくっちゃねー」

ギルバート

「それ、言ったらお兄さん悲しむんじゃないの」

リチャード・リース

「そうだけどね」

ウォルター

「結構どころかなかなか腹黒い…」

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