リチャード・リース

「その方は…」

ギルバート

「えっと、俺のボディ…じゃなくてパートナー兼保護者です」

ウォルター

「よろしく」

金髪の、鍛え上げられた肉体を持つ青年が挨拶をする。愛想はどちらかと言うとない方だ。

リチャード・リース

「ボディガード、ね」

ギルバート

「あの、リースさん」

リチャード・リース

「リシィでいいです。僕は総合大学の史学科の学生です」

ウォルター

「本当に学生、ただの学生ですか、君は」

ギルバート

「えっ」

リチャード・リース

「あれ、わからないかなあ、僕、ホントは宇宙軍関係者です。ただの学生として合うために、ここを指定しました。ここは大学の研究室ですけど」

ギルバート

「こんなところ、君、使っていいの、リッパな研究室じやない」

リチャード・リース

「ここの主催をしてますリチャード・リースと申します、自己紹介遅れましたが」

ウォルター

「研究室…か」

周りを見回しているウォルター。

ギルバート

「ウォルター」

リチャード・リース

「ここは安全です。周りの警備に宇宙軍兵士・大学保全課のものが待機しています、懐のものは使わずにすみますよ、ウォルターさん」

ウォルター

「君は…何者なんだ」

リチャード・リース

「ただの学生…通用しませんよね、これをどうぞ。僕の紋章です」

差し出された紋章を見て、頷くウォルター。

リチャード・リース

「聖歌隊に暗殺者が混じっていたこと、いつ気づかれましたか、お二人は」

ウォルター

「なんの歌でしたか、異国の歌をギルが歌った時に…」

ギルバート

「異国の歌は三曲歌ったけど、どれだか覚えてなくて」

リチャード・リース

「お願いできますか、その三曲。僕は調書作成しなければならないんです」

ギルバート

「順番はかろうじて…」

リチャード・リース

「お願いします」

琵琶湖就航の歌、花、荒城の月…。

リチャード・リース

「春高楼の…ですね」

ギルバート

「はい、花の宴…めぐる…で、隣にいた人がピストルを」

リチャード・リース

「銃口を下に向けさせたとは度胸いいですね、ほんとに」

ウォルター

「ひやひやしましたよ、昔から無茶をするから」

リチャード・リース

「取り押さえて下さったのはあなたですよね、ウォルターさん」

ウォルター

「はい」

リチャード・リース

「ありがとうございます。僕が総裁ならスカウトするところですが…ギルバートさんがいらっしゃるなら無理ですね」

ギルバート

「ははは、行ってもいいよ、ウォルター」

リチャード・リース

「無理ですよ、見かけで判断する世界です。一人暮らしはギルバートさん、あなたも無理ですよ」

ギルバート

「えっ、じゃ君は」

リチャード・リース

「僕も本当は大人なんですよ、三十二歳て死んだことになってるんです」

ウォルター

「ギルバート様、歴史の勉強、し直しましょうか」

リチャード・リース

「ここの大学でもいかがです」

ギルバート

「それは、いいよ(汗)」

リチャード・リース

「協力ありがとうございました。ところで、少しいいですか」

ギルバート

「はい」

総裁の部屋へリチャードが案内していた。

総裁

「素晴らしい歌だった、もう一度聞きたいと思ってね」

ギルバート

「宇宙軍の総裁様がね…被害者とは」

総裁

「驚いたかな」

ギルバート

「うん」

総裁

「荒城の月が最後まで聞きたかったなと思ってね。いいかな」

ギルバート

「は、はい」

澄んだ声が響く。

リチャード・リース

「この歌の歌詞、知ってますか」

ギルバート

「リースさん」

リチャード・リース

「滅んでしまった一族の城跡で華やかな頃を想像した歌なんです。四季を盛り込むのが当たり前なのに冬だけ、歌がないんです」

ギルバート

「春と夏と秋…」

リチャード・リース

「陣営の風は僕も経験しました、死ぬ直前に」

リチャード・リースが微笑んでいた。

総裁

「春も夏も秋も私も経験した…」

総裁が微笑んでいた。

ギルバート

「ねえウォルター、総裁様、夢の中でも歌ってくれって言ってた」

ウォルター

「私の夢の中では…宇宙軍に来ないか、でしたよ」

総裁

「夢だとばかり思っていたんだけど・・・違ったのか」

ギルバート

「はあっ…?」

総裁

「いや、夢の中では何かしているらしくて…」

ギルバート

「え」

総裁

「深くは考えたくはないんだけどね」

苦笑している総裁。

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