金髪の、鍛え上げられた肉体を持つ青年が挨拶をする。愛想はどちらかと言うとない方だ。
「その方は…」
「えっと、俺のボディ…じゃなくてパートナー兼保護者です」
「よろしく」
金髪の、鍛え上げられた肉体を持つ青年が挨拶をする。愛想はどちらかと言うとない方だ。
「ボディガード、ね」
「あの、リースさん」
「リシィでいいです。僕は総合大学の史学科の学生です」
「本当に学生、ただの学生ですか、君は」
「えっ」
「あれ、わからないかなあ、僕、ホントは宇宙軍関係者です。ただの学生として合うために、ここを指定しました。ここは大学の研究室ですけど」
「こんなところ、君、使っていいの、リッパな研究室じやない」
「ここの主催をしてますリチャード・リースと申します、自己紹介遅れましたが」
「研究室…か」
周りを見回しているウォルター。
「ウォルター」
「ここは安全です。周りの警備に宇宙軍兵士・大学保全課のものが待機しています、懐のものは使わずにすみますよ、ウォルターさん」
「君は…何者なんだ」
「ただの学生…通用しませんよね、これをどうぞ。僕の紋章です」
差し出された紋章を見て、頷くウォルター。
「聖歌隊に暗殺者が混じっていたこと、いつ気づかれましたか、お二人は」
「なんの歌でしたか、異国の歌をギルが歌った時に…」
「異国の歌は三曲歌ったけど、どれだか覚えてなくて」
「お願いできますか、その三曲。僕は調書作成しなければならないんです」
「順番はかろうじて…」
「お願いします」
琵琶湖就航の歌、花、荒城の月…。
「春高楼の…ですね」
「はい、花の宴…めぐる…で、隣にいた人がピストルを」
「銃口を下に向けさせたとは度胸いいですね、ほんとに」
「ひやひやしましたよ、昔から無茶をするから」
「取り押さえて下さったのはあなたですよね、ウォルターさん」
「はい」
「ありがとうございます。僕が総裁ならスカウトするところですが…ギルバートさんがいらっしゃるなら無理ですね」
「ははは、行ってもいいよ、ウォルター」
「無理ですよ、見かけで判断する世界です。一人暮らしはギルバートさん、あなたも無理ですよ」
「えっ、じゃ君は」
「僕も本当は大人なんですよ、三十二歳て死んだことになってるんです」
「ギルバート様、歴史の勉強、し直しましょうか」
「ここの大学でもいかがです」
「それは、いいよ(汗)」
「協力ありがとうございました。ところで、少しいいですか」
「はい」
総裁の部屋へリチャードが案内していた。
「素晴らしい歌だった、もう一度聞きたいと思ってね」
「宇宙軍の総裁様がね…被害者とは」
「驚いたかな」
「うん」
「荒城の月が最後まで聞きたかったなと思ってね。いいかな」
「は、はい」
澄んだ声が響く。
「この歌の歌詞、知ってますか」
「リースさん」
「滅んでしまった一族の城跡で華やかな頃を想像した歌なんです。四季を盛り込むのが当たり前なのに冬だけ、歌がないんです」
「春と夏と秋…」
「陣営の風は僕も経験しました、死ぬ直前に」
リチャード・リースが微笑んでいた。
「春も夏も秋も私も経験した…」
総裁が微笑んでいた。
「ねえウォルター、総裁様、夢の中でも歌ってくれって言ってた」
「私の夢の中では…宇宙軍に来ないか、でしたよ」
「夢だとばかり思っていたんだけど・・・違ったのか」
「はあっ…?」
「いや、夢の中では何かしているらしくて…」
「え」
「深くは考えたくはないんだけどね」
苦笑している総裁。