来栖 禅

突然ですが、皆様は
コチニールエキスや天然紅4号という
赤色の着色料をご存知でしょうか?

来栖 禅

これらはカーマインや
カルミン酸とも呼ばれ
苺牛乳などの飲料の着色や
キャンディーやチョコなど
カラフルなお菓子の着色に
使用されているのですが……。

来栖 禅

エンジムシ(コチニールカイガラムシ)
という昆虫から抽出されている
着色料だということは
ご存知だったでしょうか?

来栖 禅

これまで美味しく頂いていた飲み物や
お菓子に虫由来の着色料が
入っていると知ったら……、
一瞬、躊躇してしまいますよね?

来栖 禅

ですが、ご安心ください。
コチニールは、天然由来の素材であり、
あらゆる食用色素の中で
最も安全と言われているのです。

というわけで、これからも気にせず
苺牛乳やチョコ、キャンディーを
お召し上がりください。

魚喃 アト

おい……禅。
なんで、苺牛乳飲みながら
苺チョコ食ってるオレの前で
そーいう話をすんだよ?

来栖 禅

おやおや、偶然にも
由来が分かると怖い話に
なってしまいましたね。

これは大変失礼致しました。

魚喃 アト

てめー……ぜったいワザとだろ?
ったく、さっさと謎を出せよ謎を……。

来栖 禅

ふふっ、それでは
本日の謎と参りましょう。
表題は「隔離施設の生存者」で御座います。


第十六夜『隔離施設の生存者』


『外にはモンスターがいる。』
物心ついた時に、
大人からそう教えられた私は
軍の施設で育った。


どうやら、外の世界は
モンスターに支配されていて、
施設から出た途端、八つ裂きにされるそうだ。


『私達は弱いの?』
何気ない疑問を大人に投げかけると、
こんな答えが返ってきた。


『我々は決して弱くない。
勇敢で知恵もあり敵と闘う武器もある。
だが、モンスターは残忍で
我々を恐れ滅ぼそうとしている。』と――。


恐ろしい。想像しただけで体が震える。
きっと、私達はモンスターに
殺されてしまうんだ。
そんなことを考えていると、
警報装置がけたたましく鳴り響いた。

モンスターの襲撃だ。
大人達は施設に残されていた武器を手に取り、
カプセルの中で眠る仲間達を次々と目覚めさせた。


『お前は隠れていなさい!』
大人に言われて頑丈な隔壁の向こうに走る。
瞬間、モンスター達が
施設に入ってくる様子が見えた。


銀色のピカピカした肌。
ギラギラ光る透明な大きな目。
奇妙なことに、その中には小さな目がある。
モンスターはキィキィと猿のように叫びながら、
施設に炎を撒き散らした。

ああ、大人達が! 仲間達が死んでゆく!
憎い憎いモンスター。
私が大人になったら、必ず絶滅させてやる。


魚喃 アト

まあ、昔はコチニールで着色するのが
当たり前だったんだろーが
何も知らないで口に入れてっと
ちょっと衝撃的だよな……。

来栖 禅

ですが、コチニールは
新しい世代の食品添加物と比べると
遥かに安全なんですよ?

ですから、本日の食事は……。

来栖 禅

ピンク色が美しいハム、
鮮やかな赤が食欲を誘うカニカマを
ふんだんに使ったメニューを
ご用意致しました!

ちなみに食後のデザートは、
眩いピンク色をした
ピーチ味の蒸しケーキで御座います。

魚喃 アト

お前……完全に楽しんでるだろ?

第十六夜「隔離施設の生存者」

facebook twitter
pagetop