『あなたとお姉さんの関係は?』
『あなたとお姉さんの関係は?』
もしも、誰かにそんなことを尋ねられたのなら、私はきっと笑いながらこう答えるだろう。
よくある姉と妹の関係です
尋ねた人が「これ以上は聞かないほうがいいかな?」と思ってくれるような断言口調で私は言うだろう。
よくある、って何が?
姉と妹の関係、ってどんな?
自分の発言ながら、突っ込みどころが多いが仕方ない。
だって私には、それ以上に答えようがないのだから。
今の姉と私にまともな関係なんて無い。
例えば、私と姉は同じ高校に通っている年子だ。
来年度に私は2年。姉は3年になる、はずだった。
しかし、今年の夏に、姉はある事件に巻き込まれ、学校に行けなくなってしまった。
だから、姉は3年にはなれない。
もし復学することができたとしても、姉は私と同じ
2年となる。
このことで、私と姉の間にあった、学年の差という関係が失われた。
例えば、姉と私は身体的な特徴も異なる。
姉はとても小さく、私は平均よりも身長が高い。
姉は黒髪。私はやや明るい茶髪。
たまに会う親戚から姉と私の容姿を比較されることがあるが、姉はぱっとせず、私はよく褒められる。
姉は運動も勉強も得意ではないが、私は両方とも得意だ。
姉はデフォルメした絵を描くのが上手い。私はリアルな絵を描くのに秀でている。
他にも。他にも。
私と姉の性質は、そのほとんどが対極だった。
一緒に歩いているところを見られても、姉妹に見られたことなんてない。よくて友人関係が関の山。
これも関係性を薄くする要因の一つ。
そして、最も大きい要因は――
愛するココロ。今、時間あるか?
……何? 未来姉さん。今ちょっと忙しいんだけど。
あ、……ああ、忙しいならいいんだ。
すまなかったな。愛するココロ。
お互いの間にある、よそよそしさだ。
姉は明らかに私に対して気を使っているし、私はどう頑張っても姉と会話を続けられない。
……理解できないのだ。
姉の感情の動きが、私にはわからない。
姉がどうして妹の私なんかに気を遣うのかがわからない。
どうして姉なのに、もっと堂々としないのか?
『そんなのだから、引き籠ってしまうんだ』
これは私がまだかろうじて口にしていない、私の気持ちだ。
私と姉の間に残った関係は、おそらくこの気持ちを口にしたときが最後の瞬間となる。
決定的な関係断裂の言葉。それが無いこと。
そんな宙に浮いたような細く軽い関係性。
それが今の、私から見た私と姉の関係だ。