冬の夜の静寂に水の流れる音が響く。
雪の反射で雲が明るく、川面は鱗のように銀を映した。
その中に、姉は居る。
首から上だけで水の流れに逆らって、虚ろな瞳を私に向ける。
どうして来た? ココロ
……未来姉さんを連れ戻すために
冬の夜の静寂に水の流れる音が響く。
雪の反射で雲が明るく、川面は鱗のように銀を映した。
その中に、姉は居る。
首から上だけで水の流れに逆らって、虚ろな瞳を私に向ける。
連れ戻す? どうして?
どうして。
姉は繰り返す。
いつだって、そうだった。
その問いに答えられなかったのは、いつだって私だ。
だから、こうなったのはきっと、私のせいなんだ。
連れ戻すのに理由はいらない、よね
自分に言い聞かすように、私は言った。
『たった一人の姉を、妹が連れ戻す理由』
そんなくだらないことに私は悩んで、数多くあったはずのターニングポイントのすべてを見逃してきたんだ。
これが、最後のチャンスだ。
――言わなくちゃ。
私は凍るように冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んで、言った。
未来姉さんが、好きだからだよ
心の奥にしまい込んでいた感情を、私はきっと、このとき初めて口にした。