石上香奈

ぜーはー、ぜーはー。
ちょっちょっと、美子待ってよ~。

稲村美子

へっ?
あっ!ああぁぁ!!ごめんね!

学校は、海の見える坂道の上にある。

美子が振り返ると
香奈は、息を切らしながら後ろを歩いていた。
いつのまにか置いてけぼりにしていたらしい。
わらわらといる同じ学校の生徒もうつむいて息を切らせながら歩いている。

普通の人であれば、坂の途中から上体が前に倒れ、息を切らすほどの道だが、美子にとって大したことがないためぼーっとしていると不自然なほどにスタスタと歩いてしまう。

普通の人と、化け猫の差である。

石上香奈

も~~!!毎日、毎日この坂が恨めしい…。
ぜー、ぜー。

香奈は、どうやら自分のことで精いっぱいのようだ。


一瞬、ひやっとしたが香奈を待ち
一緒に歩き始めた。

稲村美子

ふー、あぶなかった…。

美子達が教室入ると
ほとんどの生徒が登校していた。


美子の席は窓際の後ろのほうだ。
席に着き、机の中を整理する。


美子の席より2つ挟んだ席を見た、月の席だ。


まだ来ていない。


美子は、席を立ち廊下にでた。

手洗いから教室に帰る途中で、隣のクラスを横目で覗く。


彼がいる。

鵠沼ケイ…。

友人と談笑しているようだ。
美子は少し頬を染めた時、気配を感じ
はっ!と前を見ると

月が鞄を持ったままこちらを見ている。
美子と目が合うとニヤッと笑い教室に入っていった。

稲村美子

最悪…。

美子はボソっと呟いた。

化け猫と月の日常(3)

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