彼は、最初に出会った時点で非常に高い魔力を持っていた。
この小さな体のどこに魔力が眠っているのだろうとすら思った。

だが、彼は精神的に幼過ぎた。
殺傷力が高い魔法を何の躊躇なく放てる純朴さ
例えるなら、力の加減が分からずに兎を振り回して殺してしまう子供のような危うさを持っていた。

私は、自分の帽子に魔法を施して、彼に渡した。
脳の働きを一定に抑える魔法。

私が自分に施しているのと、同じ魔法を。

榊 風音

帽子が飛んだ……?

シャルム・ソー

…………あぁ

榊 風音

なんだ……この圧迫感は?この子の魔法か?

シャルム・ソー

そうだよ。この魔力は全てシャルム・ソーのもの

シャルム・ソー

封印が解けたシャルム・ソーのもの♪

榊 風音

性格が変わった……?

シャルム・ソー

お兄さんが吹き飛ばした帽子には、シャルム・ソーの魔力と本能を抑える魔法がかかっていたんだ。ソールがシャルム・ソーのためにくれたものだったんだ

シャルム・ソー

シャルム・ソーは、ディスナティの辺境で秘密裏に行われていた実験の生き残りなんだ。外に放り出されてどうしていいか分からなかったシャルム・ソーを拾ってくれたのがソールだったんだ

榊 風音

実験……?

シャルム・ソー

純粋に人を殺し続ける殺りく兵器を作る、かのソール・グルナディエの2号機を作る実験。元々の魔力が多い子供を集めて、罪の意識を薬で消していって、殺傷力の高い魔法のみを教えていく。最後は勿論殺し合いで選別する

シャルム・ソー

その生き残りが、シャルム・ソーなんだ♪

榊 風音

そんな非人道的な実験を………

シャルム・ソー

だからね、お兄さんは何も悪くないんだよ

シャルム・ソー

第一魔法源を解放したソールよりも強い、シャルム・ソーが相手なんだから♪

シャルム・ソー

フォンセ・ドロワント!

榊 風音

………くっ!!

シャルム・ソー

無駄だよ!シャルム・ソーの魔法は防ぎようがない!

榊 風音

馬鹿な……ここまで差が出るとは

榊 風音

仕方ない!一旦退きます!!

シャルム・ソー

なんだ、帰っちゃうのか

シャルム・ソー

ダメだよ。シャルム・ソーは飽きていないからね

榊 風音

くっ………

榊 風音

そこまで離れられなかったか。けど、僕のは長距離移動するのには適さないし………

榊 風音

それよりも、部隊を置いてきてしまった……。ここまで離れてしまった上に馬もないとなると、間に合いようがないな

そんなに急いでどこに行くの?

榊 風音

なっ………!

シャルム・ソー

ダメだよ、お兄さん。シャルム・ソーは遊びたいんだ

シャルム・ソー

お兄さんの五体をバラバラにしたくて仕方ないんだ

榊 風音

………本当にさっきまでの少年なのか?

シャルム・ソー

ヌーヴェル・リュンヌ!!

榊 風音

なんだ………この邪悪な感じは

シャルム・ソー

シャルム・ソーのお気に入りの魔法なんだ。相手の全てを吸収し、無に帰す。夜空の新月のようにね

シャルム・ソー

存在そのものを消しちゃう魔法なんだ♪

榊 風音

存在って……

シャルム・ソー

行け!リュンヌ!!

榊 風音

…………すごい引力だ。経つのもやっとだ

シャルム・ソー

無駄だよ、お兄さん。シャルム・ソーの魔法に勝てる人はいない

シャルム・ソー

消えちゃえ♪

榊 風音

あれは……!

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