水面に映る月が揺れる。風が強くなってきた。

 ゆっくりと、赤い聖人は俺の元に歩み寄る。









イフリート

お前、この前と違って聖人を召喚できないんだろ? よくそれで俺様に勝負を挑む気になったな

里宮 一真

俺としても、他人の力を使うより、自分の手でお前に勝つ方が気持ちがいいからな

イフリート

ははっ。そりゃそーだ。だが、俺様はただの人間に巻けるほど落ちぶれちゃいねー。・・・身をもって体感しろよ

 再びの静寂。一匹の魚が、海から勢いよく空中へ飛び跳ねた。それが、再び水中に戻る。

 ちゃぽん、という音がした。

 その音を合図に二人は同時にぶつかる。

 勝負の狼煙は上げられた。

 

里宮 一真

おいおい。お前も武器なんて持ってるのか?

イフリート

焔剣「カグツチ」。俺様の宝具だ。持っていて当然だろう

里宮 一真

まあ、そうだな(やばい。これはかなりの予想外だ)。まあそんなものがあったところで、俺の勝利は揺るがないが

イフリート

言うじゃないか。ますます楽しくなって来た・・・ぞ!

里宮 一真

うし、ろ!? 

イフリート

おいおい何だそれは。宝具を弾くなんて聞いたことねーぞ。こりゃ力込めねーと破れねーな

里宮 一真

(移動が見えなかった。予想以上に強い・・・さて、どうするか)

里宮 一真

なんだ? 同時に二つの音が?

イフリート

よそ見してんじゃねえよ。『神楽の焔』

里宮 一真

がっ!?

アルティメットしりとり
自陣のターン
文字は『あ』

ハートカウンターに
よるスキル獲得のお知らせ
アイテムスキル
『ハウンドドッグ』

アイテムを消費して、相手に不可避のダメージを与える。消費したアイテムのレア度や効果が高い程与えるダメージも多くなる。

里宮 一真

エリシアたちもしりとりを有効に続けているらしいな。だが、こっちに順が回ったということはアスカも効果を使ったという事。それにしても、また『反射』破れるとは、今回は新スキルはいいにしろ不幸ランダムが発動するしで踏んだり蹴ったりだな!!

イフリート

何をぶつぶつ呟いている? 理屈は分かんねーけど、そのバリアみたいなのも壊せるようだし、遠慮はしないぞ。焔舞『業炎カルマ』

イフリート

出でよ。焔の業に縛られし、不死の鳥。『フェニックス』!!

里宮 一真

く、かなりのピンチだが・・・タイミングはここじゃない。まだだ

イフリート

何を企んでるかは知らねーが。もったいぶってる間に死ぬなよ。行くぜ!!

キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

イフリート

燃やせ、『カグツチ』

里宮 一真

アイギスの盾!!

里宮 一真

視界が炎に包まれた今なら当てられる。ここだ!! くノ一!

 左手を耳に当て、右手を地面に付きながら叫ぶ。万が一聴覚を遮られた時の為のサインだ。正面から、返答があった。

くノ一

私も何も見えないけど、さっきまでイフリートがいた場所よね? 任せて!! 『朱雀の御神酒』を浴びなさい!

 朱雀の御神酒。炎を司る四獣の一つである朱雀が、相似の能力の暴走を誘発し、対象に致命的なダメージを与える。

 エリシアとのアルティメットしりとりで、イフリートとの再戦を考慮して手に入れていたものだ。それをくノ一に渡し、隠れ身の術で機会をうかがわせていた。

里宮 一真

これで炎の力が内側で暴走し、最後には肉体を壊し始めるはz

イフリート

惜しいな。こっちだよ

里宮 一真

後ろ!? まさか、この炎の中を自在に動けるのか?

イフリート

何馬鹿な事を言ってるんだお前は。俺は炎の聖人だぞ。そして、これで終わりだ! 焔技『ファイナルイフリート』!!

 黒い焔を出現させ、イフリートはその身に宿した。

 俺は右手に目をやる。『神宿しの腕輪』。神との戦闘のためにはめていたそれは、奇しくも今の聖人と似た能力かもしれない。

 だけど、このままではその神との戦闘にすらたどりつけそうもなかった。

「さらばだ、人間。復活した世界でまた会うことを待っている」

 反射なら、防げるかもしれない。ただし、確率は二分の一。今の俺には『不幸ランダム』がある。どうしても、失敗の可能性が残ってしまう。

 だから、俺は叫んだ。

里宮 一真

くノ一、この戦いを、圧倒的な強さの子の聖人の動きを、絶対に忘れるな!! 次にもしこいつと戦える時には、絶対にこの経験を活かせ!

くノ一

そんな!? あなたはここで諦めるって言うの!?

里宮 一真

諦めはしないさ。俺は天才だからな! だから、このスキルに懸ける。このスキルで確率を100%に押し上げれば・・・

「させん!! もうくたばれ!」

里宮 一真

く、間に、あえ!!
『確立へんど・・・』

 イフリートの放った技と、俺の周りの見えないバリアが激突する。

 ギリギリと音を立て、バリアごと押され体制を崩した俺は、地面に左手を付き転がった。

 直後。

 俺を守っていたものは全て砕け散り、全身が炎に包まれる。

 あれはもう助からない。彼が燃えながら私の所に転がって来る。くノ一の衣装に燃え移ったが、そんな事気にする余裕なんてなかった。

 そんな音が、手首の機械から聞こえて来る。だから、見た。

 なんて読めばいいのか分からなかった。私には、読めなかった。

 視線の先で、赤い聖人がこちらを見据える。私も敗北を覚悟した。彼の言った通り、今回の闘いは忘れない、絶対に次に活かす。

 そう心に決め、運命を受け入れ、目をつぶる。

 瞳から、雫が一粒垂れた。

くノ一

やっぱり私は、死んじゃう運命なのかな・・・お母さん

 現実の世界へ、そっと願いを零して。

 相も変わらず、そんな私を嘲笑うかのように、手首の機械には勝負の途中経過が記されていた。

プレイヤーvsサルバーレ

途中戦果

プレイヤー陣:里宮一真

敗退

Re:13th.お気に入り30突破記念~「ホラーストコン」もよろしくです‼~

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