明くる日、ホームルーム前の教室にて
明くる日、ホームルーム前の教室にて
オッハヨーッス
ずいぶんご機嫌なのね……
昨日とは打って変わって晴れ晴れとした表情のツヨシが、すでに席に着いていたミヨを見つけると声をかけた。
ん?ああー、なんか寝たからかな
チッ
どーしたんだよミヨ、舌打ちか?
え?ううん……そ、そーいうわけではないけれど……で?シウの件は?
シウ?それが?
……そう……うまく……いったみたいね…………また……
どーしたんだよっ暗いぞミヨ!あ、暗いのはいつものことか!w
ガタンッ
ミヨは突然席を立った。
どーした?怒ったのか?
トイレよ!トイレ!
ミヨはそのまま廊下に出て行ってしまった。
あいつ、やっぱサイテーね
トイレの帰り道、ナナを見つけるとミヨは思いをぶちまけるように言い放った。
ミヨちゃん……お願い、我慢して……ね?
わ、分かってる。分かってる……つもり
だけど……あいつ、私を暗いとか言ったのよ!
ミヨちゃん……
だ、誰のせいで………と、とにかく、もう戻らなくちゃ……怪しまれるし
ミヨが戻っていくと、遅れてアキラも登校してきた。
どうしました?ナナさん
アキラくん……
アキラの顔を見るとナナは泣き出しそうな顔をした。
何で?何で私たちなの?何で……私なの……
まあまあ~一日目はクリアしたことですし、うまく行きますよ。それに、ワタシは味方です
本当……よね?裏切ったり……しないよね?
もちろんですとも、昨日だって暴走しそうなツヨシを止めたじゃないですか
そう……よね……
さあ、アナタも教室へ行って下さい。ワタシは先生のところに行かなきゃですので
う……ん……
ナナが教室へ入っていくのをアキラは見守っていた。口元に笑みを浮かべながら……
しかし、すっかりナナが教室へ入ってしまうと真顔に戻った。
ナナさん……アナタだって信用はできませんよ……誰だって……ヘタしたら自分さえも信頼なんてできないんだ……そーいうことです……よね?シウさん
ボク?
あ、ああーそーだそーだ、そーだった
シウだよ
キミは確か……ツヨ
アキラです!
そーかそーか、え?そーだっけ?
……うーん……ま、いいや
ところでアナタは……
何か覚えていますか?
ん?何を?
やはり……覚えてはいないのですね……
では質問を変えましょう
アナタは誰ですか?
そこには、かつてのシウとは違う、もう一人のシウがいた。シウ……と、名乗ってはいるが、姿、形、声、どれをとっても前のシウとは違う。
ボクが何者かって?
ボクはシウ。城崎修吾。眞野彰と白石七海と青木美世子と近藤毅と小学生の頃からの友達で、中でもツヨシと仲がいい。さらに言えばナナのことが好きだが、ナナはツヨシが好きなので少しツヨシにライバル心を持っているありふれた少年さ
あ、そーいえば今度の休みにツヨシを誘わなきゃだった
じゃ、行くよ
もう一人のシウは、ニコニコと笑顔を振りまきながら教室へと消えていった。
あいつ……何人目のシウだ?
……そして……ワタシは?
ワタシは何人目のアキラなんだ?
いや……何度目の……か……分からない……
苦々しい顔をしたまま、アキラはつぶやくと職員室へと向かった。
それが役割だから。
自分に設定された学級委員としての眞野彰という存在の役割だから……
記憶はときに消去され、ときに入れ換えられ続いていく。永遠という螺旋の上を……
しかし、時には取りこぼしがあって、そーいった断片の蓄積が彼らを次のターンへといざなう