ミユヘ

最後の手紙、よくみつけました。お疲れ様!
これで本当に最後です。

高校の時から付き合ってきて、今までいろんなことがあったね。たまにはケンカをしたりしたけど、その度に乗り越えてきたね。辛いことは分け合って、楽しいことは倍にして。そんなミユとの毎日は、俺にとって宝物だよ。

俺は、この世界で一番ミユを幸せと笑顔であふれるように努力し続けます。だって、ミユの隣にいられるだけで、俺は世界一幸せだから。



ミユ……俺と、結婚してください。



これからもいろんな出来事がたくさんあると思うけど、苦しいことも嬉しいことも、分け合いたいと思えるのは俺にとってミユだけなんだ。未来のことを考えるとき、俺の隣にいるのはいつもミユなんだ。他の女の子なんて想像できないんだ。

ミユは、俺にとって世界で一番大切な女の子で、これからもそれは永遠に変わらない。
まだまだ男として至らないところもあるけど、こんな俺でよければ、家族になってください。

愛してる、なんて照れくさくて人生で一度も言ったことはないけど……これを文字でだったら言えそうだから、最後に書いておきます。

ミユ、愛してる



タツキ

 封筒から出てきたのは、キラキラと輝く、おそらくダイヤであろうものが付いた、シンプルだけれど可愛らしいデザインの指輪だった。

ミユ

タツキ……!


 タツキがいなくなってしまってから一度も流れなかった涙が、目から零れ落ちた。



 もういないのに。



 もう、私の好きだった声を聞くことも、男らしい腕に抱かれることも、優しい瞳を見つめることも、できないのに――。






 プロポーズされる瞬間は、きっと人生で一番幸せで、あったかいものにあふれているだろう。子どもは、男の子が一人に女の子が一人。男の子はきっとタツキに似て少しいたずらっ子で、でも優しい笑顔を持っているちょっと不器用な子。女の子は、ちょっと泣き虫でお父さんっ子で、いつもタツキについて回ってる。お兄ちゃんと妹は仲良しで、週末には公園に遊びに行って、みんなで作ったサンドイッチを食べる。





 ずっと、こんな風に未来がやってくるだろう、と思っていた。ずっとずっと、そんな将来が訪れるだろうと信じていた。




 なのに、どうしてこんなにも私は今、苦しいんだろう。胸が、張り裂けそうなんだろう。


ミユ

なんで……いないの?タツキ……!



 何度呼びかけても、私の好きだった人からの返事はない。

ミユ

世界一幸せにしてくれるつもりなら、戻ってきてよ!ねえ……ねえ!








 一度流れ始めた涙は、止まることを知らなかった。




6通目 二人の部屋の写真立ての後ろ(5)

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