早く準備ろよ~
道路混んじゃうよ。

ちょっと待ってよぉ~
もう、でれるから。

外で待ってるから。

は~い!

久々のデートで浮かれる二人。
この数時間に起きる事なんて、
今の二人には知る由もなかった・・・。

今日のデートに合わせたように
天気が回復して良かったね。

天も祝福してるのかなぁ?
それよりも、早く乗りなよ。

は~い!

二人を載せたバイクは
目的地に向かってひたすら進む。

長い事で有名なトンネルが見えてきた。

トンネルを抜ければ目的地だよ。
もう少し辛抱してね。

私は大丈夫だよ。

しっかり掴まっていてね。

うん。

トンネルに入ってから20分は過ぎただろうか?
まだまだ出口は見えなかった。
時刻は、午前10時なのに日の光が入らないせいで
あたりは深夜のような暗さだ!
僕はどれくらい走ったかを知りたくて
カーナビに視線を向けた。

あとどれくらいで、トンネル抜けるの?

ちょっと待ってよ。
今、見てるからさぁ。

あと20分位で、抜けれるみたいだよ。
トンネルさえ抜けたら、
目的地までは時間かからないからね。

流石に、乗っているだけの彼女にとっては
つまらないのだろう。
表情を見なくても、仕草で分かった。
僕の腰をつかんだ彼女の手が、
少しだけ強く握りしめられたのだから。

-5分後-

「GPSが受信できません。」
「電波の入りにくい場所を走行中です。」

いつもの事かぁ~
そろそろ、ナビを買い換えようかな。

そう思いながら、バイクを走らせるのであった。
あれから、彼女は無言のままであった。

-20分後-

法廷速度を守って走っているのに
未だにトンネルを抜けない。
ナビが示した距離が間違ってたのかなぁ?
そんな事を思いながら、バイクを走らせていた。

-20分後-

ねぇ~、まだ~?
同じ景色で飽きちゃったよ。
なんか、話ししようよ!

トンネルを抜けれると言っていた時間を
ゆうに越していた。
あまりに暇なので、彼に話かけてみた。
だけど・・・。

・・・

ご飯は何を食べようか?

・・・

名物って何かなぁ~?

・・・

疲れちゃったの?
どっかで休憩してもいいよ。

・・・

それにしても、
さっきから一台も車通らないね。
休日だって言うのに、変だね?

・・・

何を話しかけても返事が無い。
彼のメットは、フルフェイスだし
トンネル内のノイズで聞こえていないのかも
そう思って、話かけるのをやめた。

-5分後-

やっとトンネルを抜けた!
流石に長すぎるトンネルで、
座っているのにも疲れてしまった。

ねぇ~、
目的地まではもうちょっとだけど
SA(サービスエリア)で少し休もうよ!
喉も乾いたしさぁ~。
それに長時間の運転で疲れたでしょ?

・・・

彼は返事をしてくれなかったけど
SAに向かって走ってくれていた。

駐輪場にバイクを停めたので、
私は早々とヘルメットを脱いで地面に降りた。
長時間座っていた為、
地面に立った際の解放感は何とも言えない。
そして、彼もバイクから降りて
ヘルメットを脱いだ。

私はいつものように、彼のヘルメットを受取った。
そのヘルメットがあまりに重いので
何かと思い中を確認した。

そこには、彼の顔が残っていた。
慌てて彼の身体を見ると、首から上が無かった。
ヘルメットの中の彼は、
目と口が見開いた状態だった。

何故このような状態になったのか分からないが
彼は最後の想いで、
私を此処まで運んできてくれた。
私はそう思いながら、メットを抱きしめた。

それから、色々あったけど・・・。

いつも同じ夢をみる。
あの時のデートの事だ。
そして今日も同じ夢をみるんだわ。

おやすみなさい

トンネル内で、
バイクに乗った若者2人が
事故に遭いました。

事故現場の様子から、
デートに向かう途中だったようです。

彼は首から上が切断されており、
100M先に転がっておりました。

彼女は彼の身体に寄り添う形で
バイクとともに横転していました。

愉快犯の仕業でしょうか?

トンネル内にはピアノ線が
張ってありました。

但し、そのトンネルは
10年前に封鎖されている筈のトンネルで
何故この二人が、このトンネルを
走行していたのかは謎です。

警察は事件事故の双方で捜査中です。
現場からは以上です。

これはあくまでも噂ですが、
このトンネルで、夜な夜な霊を見た
という人が続出したそうです。

見た人が言うには、
顔が無い人が突然、目の前に現れるそうです。

それに、
このトンネルでは不可解な事故が多発した為
通行禁止になったそうです。

それ以来、
近所の子供たちやTVが心霊スポットとして
訪れるようになりました。

このトンネルの名前ですか?
顔塚トンネルです。

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