「え……、えぇぇぇぇ!?」
その場にいた皆が声を揃えて言った。
「え……、えぇぇぇぇ!?」
その場にいた皆が声を揃えて言った。
え? 希が、後方支援?
俺は、もう一度聞いた。
希の実力なら、前衛で敵を薙ぎ払うという役どころがお似合いのはずだ。
うん。そうだよ? 提出した書類にもそう書いたから。
希が平然と言う。
本当だ。編入推薦書に書いてある。
書類を鞄から取り出し、瑞希が言う。
そ、それは、本当ですか?
静香が希の肩を掴み、目を輝かせて言った。
う、うん。本当のことだよ。
あと、痛いから、手を離してほしい……。
我に返った静香は恥ずかしそうにソファーに座った。
ああ、訳なら聞かないでね。
誰にでも秘密にしたいことはあるでしょ?
希の目つきが変わって、その場の空気が凍りついた。希の目は氷の様に冷たく、その場に居た全員を黙らせた。
そして、希は「パンッ」と手を叩き笑って続けて話し出した。
じゃあ、今度は私の自己紹介ですね? 改めまして、名前は神裂 希。武器はさっきの試合で見せた刀。だけど……。
そう言った希は両手を前に出し、桜色の魔方陣を展開、俺を含めた皆に一気にバリアを張った。
私は、主に皆を守る後方支援担当ってこと。
希が自慢気に言う。
確かに、バリアの質と、瞬時にバリアを張ることに関しては、少なくとも俺たちよりは長けている。それは今の行動でわかった。
でも、なぜなんだ。
理由は聞くなって言われたけど、気になるものは木になる。
あとで調べてみるか……。
あ、ありがとう!
俺が、そんなことを考えていると、静香が希に抱きついた。
どうやら、静香は本気で嬉しかったようだ。
ということで、今日は私のフルコースを皆に振舞ってあげるね!
今日はみんなで盛り上がろうー!
そう言って、希は鼻歌を歌いながらキッチンに向かっていく。
へえ。可愛いし、料理ができるなんて優斗には勿体無いな。
優斗なんかやめて、俺の所に来いよ。
信也が冗談まじりに言う。
それは私が許しません。
そう言って静香は魔方陣を展開し、簡易形態で展開したデバイスの銃口を信也の後頭部に付ける。
おお、静香が瑞希以外のために銃口を向けるとわな。
俺は、静香の行動に驚いた。
冗談です、霧咲さん。
信也が両手を挙げて降参のポーズをとる。
なら、いいのですが。今後彼女に許可なく触れればその場で打ち抜きます。
静香の冷たい目が信也を見下す。
は、はい……。
信也がソファーで小さくなって座る。
で、でも、静香は私の……
瑞希が言おうとすると、それに静香が被せる。
大丈夫です。
瑞希お嬢様のお世話も、これまで通り行います。
そうですか……。
瑞希も信也と同じようにソファーに座る。そして、静香が俺の方を睨む。
あ、ああ。
俺は、お前の行動に異議はしないから……。
俺を含め、このチームのメンバーは、気に入ったもは絶対守るという静香の性格を知っているので、静香の決めたことには深く立ち入らないようにしている。立ち入れば、蜂の巣だ。
ごめん。ちょっと誰か手伝ってー?
キッチンで希が言った。
はい! 私が行きます!
希の声を聞いて、静香が一目散にキッチンへ向かう。
静香が興味を示すなんて、いつ以来かしら?
瑞希が俺に話しかける。
あれだろ? 小学校の時の巨大芋虫以来だろ?
俺は、小学生時代の記憶を呼び起こす。
じゃあ、希は芋虫と同等ということか?
「フハハッ、ハハハハ!」
俺と信也と瑞希は、キッチンに立つ静香と希を見ながら笑った。