「BATTLE END!」

 草原のステージが、元の体育館に戻っていく。

神宮寺 瑞希

 し、試合終了! 勝者は、神裂 優斗!

 瑞希の声が、静まり返った体育館に響き渡る。

 「うおぉぉぉぉ!」

 体育館が再び歓声で満たされた。

 俺は、デバイスをデバイスホルダーに収め、体育館を後にした。

 本来なら、あのスタイルで戦うつもりはなかった。

 若干の後悔が俺の心を侵食していく。

 しかし希であれば、あのスタイルでも俺と互角に戦えると思った。

 それくらいの実力は持っていた。それは手合わせしたからわかる。だが、希はそれをしなかった。

神裂 優斗

 どうして希は本気を出さなかったんだ?

 希に対しての疑問が少し俺の心に引っかかった。

 俺は、冷蔵庫から麦茶の入ったペットボトルを取り出し、それをグラスに注いだ。

 そして、二階の希の部屋に持って行った。

 俺が希の部屋のドアをノックし、部屋に入ると、ベッドの上で目を覚まし、起き上がっている希が居た。

神裂 優斗

 お、目が覚めたか。

 俺はそう言って、持っていたグラスを希のベッドの横の机に置き床に座った。

神裂 希

 う、うん。

神裂 優斗

 状況を簡単に説明すると、俺が希に勝ったということだ。

 そして、希はそのまま倒れて、保健室で休んでたんだが、なかなか起きないから、家まで運んだという状況だ。

 俺が、そう言うと、希は下を向いた。

神裂 優斗

 いや、希は強かったし、それに、生徒会長が希のことを……。

 俺が、フォローをするために、そこまで言うと、希が笑い出した。

神裂 希

 フフッ、ハハハッ。

神裂 優斗

 何だよ。てっきり泣いているのかと思ったよ。

神裂 希

 ハハハッ。ごめん、ごめん。

 希が笑いながら言った。

神裂 希

 さすがに学年トップの本気は凄いね。

神裂 優斗

 まあ、一年の頃から武術分野では学年トップだったからな。

神裂 希

 へえ、一年生の頃からなんだ。それは負けてもしょうがないか。

 希が笑う。

 すると、一階から話し声が聞こえた。

神裂 希

 誰か来てるの?

神裂 優斗

 ああ、そうそう、明日から―――痛っ!

 希が俺に聞いてきたので、答えようとした瞬間、俺の後頭部を凄い衝撃が襲い、続いて視界が真っ暗になり、顔面にも凄い痛みが走った。

榊原 信也

 希ちゃん、目が覚めたかい?

 ドアを蹴破り入って来たのは、榊原 信也だった。 

神裂 希

 し、信也君!?

 希が、慌てて布団を着直した。

榊原 信也

 ああ、大丈夫だよ。可愛い女子の下着は誰に見せても減るもんじゃないし。

  信也がそう言って笑っていると、背後から脳天に拳骨を御見舞いささせて、信也は床に突っ伏した。拳骨を御見舞いしたのは、神宮寺 瑞希であった。

神宮寺 瑞希

 大丈夫?こいつに何かされなかった?

 瑞希が、床に突っ伏している信也を踏んで、近くに寄って、希の手を握った。

神裂 希

 う、うん。何もされてないよ……。

 希は、瑞希に踏みつけられている信也を心配しながら、瑞希に答えた。

神裂 優斗

 お、おい、瑞希。そろそろ信也の上から退いてやってくれ。限界だそうだ。

 俺は、信也が蹴飛ばして壊したドアの下から這い出て言った。

神宮寺 瑞希

 あれ、優斗、居たの?

 瑞希が信也の上から退きながら言った。

神裂 優斗

 居たよ!

 さっきキッチンで麦茶入れていただろう!

 他にどこに持っていくんだよ!

神宮寺 瑞希

 えーっと。トイレ? 

 瑞希がわざとらしく適当なことを言う。

神裂 優斗

 おかしいだろ! トイレにわざわざ麦茶を持っていく奴なんて見たことないぞ!

 そして、こんなやりとりを続けていると、その様子をベッドで見ていた希が笑い出した。

神裂 希

 フフフッ。フハハッ。

神宮寺 瑞希

 さて、警戒心が解けたところで、改めて自己紹介をしましょう。

 ようこそSクラスへ神裂 希さん。

 瑞希は、微笑んで希に言った。

  神裂 希は、瑞希に促されるまま、一階のソファーに座った。

 ソファーには、霧咲静香が既に座って小説を読んでいる。

 俺を含めた皆がソファーに座り、麦茶を一口飲んだ。

神宮寺 瑞希

 じゃあ、私からね。

 私の名前は神宮寺 瑞希。

 このチームでは、主に優斗と一緒に前衛を担当しているわ。

 魔法属性は水属性。武器は、主に両方に刃が付いているタイプの剣を使うわ。

 最後に瑞希は「よろしくっ」と笑ってソファーに座った。

榊原 信也

 じゃあ、次は俺だ。改めまして、俺の名前は榊原 信也。さっきの試合はやられたよ。

 信也が握手を求める。希はそれに応じる。

榊原 信也

 で、チームでは、主に中距離攻撃を担当している。

 まあ、優斗と瑞希が捌ききれなかった敵を俺が捌くって感じだな。

 そして、俺の魔法属性は雷。武器はさっきの試合で使った斧が主な武器だ。

 最後に信也も「よろしくな」と言ってソファーに座った。

霧裂 静香

 では、次は私ですね。

  そう言って、静香は読んでいた本をガラスのテーブルに置き、希のほうを見る。

霧裂 静香

 私の名前は、霧咲 静香。チームでは主に後方支援です。

 魔法属性は風、武器は二挺の銃です。他には、近距離格闘ができます。以上です。

 静香は、そう言ってまた本を手に取り、読みだした。

神裂 希

 よろしくね、静香さん。

 でも、今日からは静香さんが前々から願っていたことができますよ?

 希が静香に言う。その発言に静香だけではなく、周りのみんなが驚いた。

 それもそのはずだ。このチームの後方支援は静香一人だからだ。

 そして、静香のやりたかったこととは、このチームに入った時点で言っていたこと。つまり、後方支援ではなく、本来の中距離戦闘をしたいという願い。

 では、後方支援は誰が担当するのか。

 ここにいる誰もがそう思った。

神裂 希

 誰が後方支援を担当するのか? 

 それが今、皆が思っている疑問ですよね?

 希が笑顔で皆に言う。そして、勢いよくソファーから立ち上がり、胸を張ってこう言った。

神裂 希

 私がやります!

 「え……、えぇぇぇぇ!?」

 その場にいた希以外の皆が声を揃えて言った。

第三十八話:《チームメイトの自己紹介1》

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