玄関からするあの音に、ナキとミシェルは息をのむ。

 ミシェルが立ち上がろうとすると、ナキが掌を見せて、ミシェルを制止させる。

お姉さん……

 ナキは親指を突き立て、グッドサインを出すと、テーブルから消え、玄関へと移動した。玄関扉から手を出し、先程同様にドアスコープに手をやろうとしたその時。

 ドンドン、ドンドンドンドンドン。

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン。

 扉を叩く音が、更に強くなった。

 驚いたナキは、ドアスコープから手を放して手をのけぞらせる。

 慌てて元の位置に戻り、ドアスコープを覗く。すると、中から覗く人物に視界を疑った。

すみません、すみません。扉を開けて頂けませんか!!

 どうして。思わずドアスコープから手を放した。

 ステファンの声で無いことから、玄関へとやって来たミシェル。

 ナキが扉から距離を置いたところで、玄関に置いてある台に乗り、ドアスコープに目をやった。やはり、見覚えのない男性の姿だ。

 安堵するミシェルと対照的に、小刻みに震えるナキ。

……もしかして

 ミシェルは内カギを開錠し、扉を引いた。

 それと同時に慌てて男性が入ってくる。

き、君がこの家の子かい?

はい。おじさんはもしかして、前この家にいたお父さん?

あ、ああ……!

 ミシェルは手を隠すようにナキの前に立ち、どうぞと扉が開いたままのリビングへと手をやった。

――続

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