来栖 禅

当館においでの皆様。
いつも謎に挑んで頂き、
誠にありがとう御座います。

来栖 禅

徐々にではありますが、
解き手の数が増えつつありますね。
大変、喜ばしいことです。

ですが……、
当館最大の謎を解き明かすには
今よりもっと大勢の解き手が
必要になるはず。

解き手の皆様……。
もし、謎解きに
自信のある方を見かけたら
当館をご紹介頂けないでしょうか?

どうか、皆様の知恵と勇気を
お貸し頂ければ幸甚に御座います。

来栖 禅

それでは、本日の謎と参りましょう。
表題は『届かぬ声』……。

来栖 禅

解き手の皆様に、私の切なる声が
届くことを願うばかりで御座います。

 

第八夜「届かぬ声」

和歌が彼氏を殺した。
それはもう凄惨な殺し方。

人は憎しみを抱いている時は
必要以上に攻撃的になるそうだ。

だが、俺には関係ない。
和歌がいつも通り飯を作ってくれたので、
俺はそれをたいらげて家を後にした。


雅が父親を殺した。
彼女は性的虐待に苦しめられていた。
だが、俺には関係ない。
父親の陰茎を切った彼女は、
俺に罪を告白したが知ったこっちゃない。

波流が祖父母を殺した。
厳しいしつけに嫌気がさしたらしい。
波流は俺に街を出ると行った。

だが、俺には関係ない。
しかし、波流と一緒に寝られなくなるのは
ちょっと寂しい。


いずみが同級生を毒殺した。
いじめられていたそうだ。

だが、俺には関係ない。
いずみは毒について説明しながら、
俺の耳に優しく触れた。
こいつの華奢な指が嫌いじゃなかった。

初音が母を殺した。
ジャンキーだったらしい。
これで自由になれると笑う初音は、
これまで俺と過ごした日々の中で
一番幸せそうだった。


寧々が不倫相手の上司を刺殺した。
もう、あいつと一緒にテレビを見て
夜更かしできないのかと思うと、
すこし残念だ。


小朝が今から彼氏を殺しに行くらしい。
どうやら、相手はかなりのろくでなしで
小朝から何百万という大金を借りて
別の女に貢いでいたそうだ。


俺は気まぐれで
「やめとけよ」と声をかけた。
だが、小朝は困った顔で笑うばかり。

まったく、女ってのは
面倒なやつばっかだ。
でも、お前らがいなくなると……寂しくなる。

やれやれ、なんて俺は無力なんだ。

 




来栖 禅

『届かぬ声』……。
当館にも、毎日の如く
虚しく散る声が響いております……。

ほら、今日もまた……。

魚喃 アト

禅っっっ! 
オレの飯はまだかよ!

ったく、肉食わせろよ肉っ!
それも極上のやつをよぉっ!

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