魚喃 アト

突然だけどよぉ……。
フェニール・エチル・アミン
ってのを知ってるか?

魚喃 アト

まぁ、簡単に説明すっと
脳内に分泌されるホルモンだ。

魚喃 アト

こいつは、恋に落ちている時なんかに、
ドッバドバ出やがるわけなんだが……。

魚喃 アト

このPEAをコントロールできりゃ、
意中の相手を自分に
惚れさすなんてことが
可能だと思わねぇか?

魚喃 アト

あぁっ?
なんでそんな話をしてんだってか?

ま、ようするに……今回の謎にもPEAが
関係してるんじゃねぇかってことだ。

ちなみに……題名は
『恋人のように暮らそう』だ。

魚喃 アト

恋愛沙汰はギリシャ時代から
迷宮なんて言われてるが、
優秀な解き手ならどんな謎だって
そっこークリアだろ?

 

第五夜『恋人のように暮らそう』

彼女ができた。
年齢は二十歳の俺より二十歳年上で、
前の旦那との間にできた子供がいる。
だが、愛さえあれば関係ない。

暴力団組員だった亭主に暴力を振るわれ、
ゴミクズ同然のように捨てられた母子。
悲惨な生活を送ってきたふたりを
俺とその家族が守るんだ。

そして、彼女の子供を、
俺は自分の子供のように
大切にするつもりだ。

深い絆で結ばれた兄弟や
親も賛成してくれた。
しかし、彼女は俺に負い目があるのか
子連れでごめんねといつも言う。


そりゃ、俺も男だ。
複雑な気持ちもある。
前の旦那のことを多少は意識もする。

だが、過去は過去。
重要なのはこれから訪れる未来だ。

俺は自分にそう言い聞かせ、
彼女には『恋人のように暮らそう』と伝えた。
そのことがよっぽど嬉しかったのか、
彼女はポロポロと涙を零し、
この幸せを絶対に
手放さないと言ってくれた。

そんなある日――。
彼女の家に遊びに行ったら、
妙な計算式が書かれたメモが
テーブルの上に置いてあった。

『5106+56410+78+281+161
+8518+541+8981=143』

そう言えば、彼女は結婚していた頃に
ヤクザだった旦那に頼まれ、
秘密の暗号を駆使した
帳簿を管理していたらしい。

もしかしたらこれは、その名残か?

いやいや、これはただの落書きだろう。
ヤクザな世界と
彼女が繋がってるわけがない。

なんせ俺が彼女の旦那を
破門に追いやったんだから。

それに、もし繋がっていたとしても
愛さえあれば問題ない。

彼女が俺を心から愛してくれるように、
俺も深く愛しているんだから。

  



魚喃 アト

人は愛で変わるなんて言うが、
簡単に変わっちまうような人間の
どこがいーんだ?

魚喃 アト

ま、オレには
どーでもいいことだけどよぉ。

魚喃 アト

そうそう、ちなみにだが……。
恋愛ホルモンの
フェニール・エチル・アミンは
分泌させなくても、
ほぼ同じ効果を持つ薬品を
入手できるってこと知ってるか?

魚喃 アト

ただし、手に入れた途端
刑務所行きだ。

なぜなら、その薬品は
覚醒剤として認定されてて、
世界規模でその使用が
禁止されてるからな。

魚喃 アト

それでもっつーなら、
そん時はやるっきゃねぇよな?

第五夜「恋人のように暮らそう」

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