俺が体育館に戻ると、体育館内は土煙で満たされていた。
俺が体育館に戻ると、体育館内は土煙で満たされていた。
えっと……。状況が読めないな。
土煙は次第に晴れていき、そこには、壁にたたきつけられたまま動かない静香がいた。
し、勝者は、神裂 希!
「うおおおぉぉぉぉ!」
瑞希が勝敗宣言をすると、体育館が喜びと驚きの歓声で満たされる。
どうやら、勝ったのは希のようだ。
希は、医療班に担がれる静香を見届けた後、体育館を後にした。
俺が、希の後を追いかけようとすると、後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、カメラとマイクを持った三人の男女が立っていた。
いよいよ、最終決戦ということになりましたが、今の心境は?
いきなり現れて、俺にマイクを向けてきたのは、この学校の新聞部の部長で三年生の辻元 陽子だった。
彼女は、情報収集において、他を寄せ付けないほどの才能を持っており、彼女に狙われたら最期、隠し通せる秘密は一つも無い。
実際、過去に彼女が暴いた情報のおかげで、世界各国の政界の人間の一部が、その職を失うことになった。
もちろん、日本政府も例外ではない。
いや、今の心境も何も、全力で相手をするだけですよ。
そうですか。わかりました。
では、もう一つ。
そう言った辻元先輩の橙色の目が、輝きを増した。
その目を見たとき、俺は、質問される内容が大体分かってしまった。
今回の編入生とは、婚約者同士という噂が流れていますが、この噂は事実ですか?
辻元先輩は満面の笑みを浮かべて俺に質問をしてきた。
じょ、情報が早いですね。
一体誰から聞いたんですか?
俺は、辻本先輩に聞く。
それは、私が記者である限り、守秘義務というものが存在しているんですよ。
だから、情報元はお伝えできません。
そうは、言われたが、大体の情報元の検討は付いている。
どうせ、信也が言ったのだろう。後でぶっ殺す。
で、どうなんですか?
噂は本当なんですか?
橙色の瞳が俺の目の前まで近づき、彼女の胸が、俺に当たる。
目を逸らさなければ、見えてしまう。
ち、近いです。先輩!
俺は、辻元先輩の肩を掴み、目の前の橙色の瞳と俺に当たる二つの柔らかいものを離した。
きゃっ!
力が強すぎたのか、彼女は転んでしまった。
同時に、近くに居たカメラを持ったもう一人の男がカメラのシャッターを切った。
「カシャッ!」
フラッシュとシャッター音が鳴った。
ナイス!
え……。
辻元先輩は、すごい勢いで立ち上がり、俺にマイクを向ける。
さあ、質問に答えないと、この写真で有ること無いこと書いちゃうよー?
どうやら、辻元先輩に嵌められたらしい。
分かりました。答えますよ。
その代わり、有ること無いこと書かないでくださいよ?
俺は、辻元先輩に、俺と希の関係について話した。
ありがとうございました!
この写真は責任を持って消去しておきますので!
では、次号、楽しみにしておいてください!
先輩はそう言って、体育館から風のように去っていった。
おーい。優斗。
タイミング良く、体育館の反対側から、信也を呼びながら近づいて来ている。
おー。丁度良かった。お前に聞きたいことができたんだよ。
俺は、そう言って信也に近づいた。
もちろん、聞きたいことなど無い。
信也をボコボコにするための口実だ。