幽霊よりも甘味が食べたい
第19話
幕間
「怪談とドーナツ」
幽霊よりも甘味が食べたい
第19話
幕間
「怪談とドーナツ」
そういえば佑美奈。
お前が鳴美先輩の夢を見ていたのに、黙っていた理由な
あっ!
それ、あの時ちゃんと話したでしょ? まだ引っ張るの?
しらゆきへ行ったことの報告が終わり。
そのまま教室でくだらない話をしていると、ピヨ助くんが突然そう切り出した。
わたしはちゃんと、あの怪談の後に喫茶店『星空』でピヨ助くんに話したのに。
お前が話さなかったのは、
俺の出したドーナツを食べたことで、俺の中を覗き込んでしまったんじゃないか?
と、思ったからだったな?
うぅ……そうだよ。……違ったけどね?
ピヨ助くんが出してくれる、とっても甘くて美味しいドーナツ。
あれを食べ続けたことで、わたしはピヨ助くんの記憶だとか、心の中だとか、そういうものを見てしまったのではないかと思ったのだ。
だって、鳴美さんの声を初めて聞いた、あの時。
幽霊にすっかり脅えてしまい、わたしがパニック寸前になった瞬間に聞こえた、あの声が。
鳴美さんとピヨ助くん――九助くんの、二人の会話だったから。
今思えば。あれは、鳴美さんが助けてくれたのかもしれない。
わたしは二人の会話を聞いて、自分を取り戻せたのだから。
本当は、鳴美先輩の霊とリンクしていたんだったな
うん、そうだよ。
……おかげで、助かったんだけどね
……そうだな
ピヨ助くんは机の上にあった、中身の無い紙袋を羽で取る。すると、ふっと消えてしまう。
俺が生み出したドーナツを食べることで、お前の霊感が上がっているのは、間違いないだろうな
……鳴美さんにも言われたからね。うん
でも、食べるのをやめるつもりはないんだろ?
もっちろんだよ! 絶対やめないよ? やめられるわけがないよ! あんなに美味しいんだもん。食べ続けるよ!
あーうるさいうるさい。
わかってるっつーの
やっぱ雑になったよね、ピヨ助くん……
前からこうだろ?
……とにかくな。別に、俺も止めはしない。怪談調査のこともあるしな
うんうん。ギブアンドテイクだね
そういうこった。
……でもな、あんま気にするなよ
……気にするなって?
ピヨ助くんはふわりと浮かび上がり、わたしの正面に降り立つ。
いいか、お前は甘い物が第一だな?
うん。なにを今さら
そして俺は、怪談調査が一番だ
そうだね。よく知ってるよ
だからな
こほんと、器用に羽を口元に当てて咳払いをしてから、続きを口にする。
別に俺の記憶を見ようが、心を見ようが気にするな。
そんなもの、お前とリンクした時点で覚悟の上だ!
俺はそんなことより、怪談調査なんだからな!
ピヨ助くん……そっか
どうやらわたしは、ピヨ助くんのことを見くびっていたようだ。
彼の怪談調査に懸ける執念は、わたしの甘い物に懸ける想いのそれと、同じ。
わかったよ、ピヨ助くん。
これからも、わたしは遠慮無く、ピヨ助くんの出してくれるとっても甘くて美味しいドーナツを食べ続けるからね。
そのかわり
ああ。俺の怪談調査にしっかり付き合えよ。佑美奈
わたしとピヨ助くんは、笑顔で握手をする。
もちろんピヨ助くんの方は羽で、握るとふわっふわした触り心地。
の、はずなんだけど。
一瞬だけ、男の人のゴツゴツした手を握っているような感触がしたのだった。
あ、そういえば。
名前、九助くんって呼んだ方がいい? それともピヨ助くん?
好きにしろそんなの!
じゃあピヨ助くんでいっか。慣れてるもんね
お前は『怪談・甘い物はわたしのもの』な
やめてよ! そんな怪談話作らないでよ?
どうした『怪談・甘い物はわたしのもの』落ち着けよ
ピ……九助くんこそ! 鳴美さんに言いつけるからね!
・・・・・・
あー……やっぱ、お前にそう呼ばれるのは、なんか変だな。俺も戻すから、戻してくれ
そうだね、わたしもピヨ助くんがいいや
それでよろしく頼む。佑美奈
うん。これからも、よろしくね。ピヨ助くん
幕間「怪談とドーナツ」了
*akrt*さん、ありがとうございます!
すみません、今のところここまでしか書いておらず、未完です。時間見て続きを書きたいとは思っています。
続きを書くとしたら、カクヨムと、他に掲載先が見付かればそちらにも、と思っています。
リンクはストーリー情報に貼っておきます。
こんにちは。ストコンで拝見したときから、楽しい話の流れと、最後は想像以上の恐怖が迫ってくる相反したようでいて調和したストーリーにぞっこんでした。カクヨムさんでになるのでしょうか、またこの話が読めること、続きが読めることを楽しみにさせていただきます。(会員CridAgeT)